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第8章 南部動乱編
軽視
<王軍指揮官リヒャルド・イゾリンデ視点>
「将軍、この眺めは壮観ですなぁ」
「我が軍の勝利は約束されたようなものですぞ」
「これだけの兵力差がありながら万全の備えをしているのですから、大勝以外考えられんでしょ」
「問題など起こりようもありません」
開戦が近づくにつれ増していく、この空気感。
正直言って、好ましくないな。
できれば改善したいところだが……。
普段から女性である私のことを侮っている彼らに、開戦直前の今、自制の言葉を投げかけたところで響くとは思えない。それどころか、反発を買うだけ。
王家の血を引く公女将軍であり、それなりの実績も上げているゆえ、公の場では私に対し本音を隠し取り繕っているものの、内心は違うのだから。
ならば、今回はこのまま開戦を迎えた方がいい、か。
「間違いなく楽勝ですよ」
「……そう願いたいものだ」
「イゾリンデ将軍は心配性ですなぁ」
「……」
「武骨な我らではそこまでの不安を持てませんが、やはり将軍は違うようで」
「はは、女性特有のものかもしれませんぞ」
「……」
「とにかく、心配は無用です」
「その通り。我らに任せておけば開戦と同時に勝利を手にすることができますからな。公女将軍様はゆっくり見物していてください」
言葉を選びつつも、この発言の数々。
相変わらず失礼な輩が多い。
開戦前でなければ、嫌味の1つでも言ってやりたいところだ。
「おぬしら、口が過ぎるぞ」
それでもまあ、中にはこういう部隊長もいる。
「何だと!」
「陛下から任を授けられた上官に対する態度ではないと思うが」
「っ!」
希少な援護射撃は心地良くもありがたい。
ただし、この場面での揉め事はごめんこうむりたいな。
「今は開戦前だ。それくらいにしておけ」
「……」
「……」
「……」
「……」
慢心も過信も褒められたものではない。
油断して良いことなど1つも存在しない。
その上、内輪もめなど……。
「各自、開戦に備えるように!」
このような中途半端な姿勢が良くなかったのか。
開戦後は、狙いが外れてばかり。
特注の盾は簡単に破壊され、先鋒の足は止められ。
西の挟撃部隊は抑え込まれ、南の奇襲隊に魔物まで制圧されてしまった。
対して、敵の魔法の矢はいまだ尽きず。
恐ろしい爆発を引き起こす魔道具まで。
「……」
準備は万端。
敵の戦力分析も十全だったはず。
なのに……。
損害は甚大。
常識的な許容量を既に超過している。
はは……。
認めるしかないか。
私の読みが甘かったことを。
「……」
王家の意向はもちろん承知している。
強く望んでいることも分かっている。
だが、今はもう……落としどころを考えるべきだろう。
幸いなことに、兵員には余裕がある。
明日以降に巻き返すことも十分可能。
ならば、一度退いて再戦を選んだ方がいい。
ただ、私と同様に王家の要望を理解している部隊長たちの多くは……。
「止まれ! 止まるんだ!」
「敵は少数だ! 怯むんじゃない!」
続戦の意志に変化はないようだ。
「「「「「「「おお!」」」」」」」
扇動の効果も開戦当初よりは落ちたとはいえ、まだそれなりの効力を発揮している。
「進めぇ!」
「「「「「「「おう!」」」」」」」
難しいところだな。
「リヒャルド様!」
「……」
トゥオヴィか?
戦闘中に持ち場を離れるとは、珍しい。
「どうしたのだ?」
「僭越ながら……具申よろしいでしょうか?」
これもまた珍しい。
遠征に帯同している女性小隊長は貴重ゆえ、それなりに言葉を交わす仲ではあるが……。
現状を思い知らされるな。
「申してみよ」
「はっ! ワディンの……」
トゥオヴィが口を開こうとした、その時。
「ちょっと待て。あれは何だ?」
中空を翔ける物体が目に入ってきた。
魔法の矢ではない。
小さな球体だ。
「リヒャルド様?」
認識したそれが若干右にそれ。
少し離れた地点に落下、した次の瞬間。
ドッゴォォォーーーン!!!
「将軍、この眺めは壮観ですなぁ」
「我が軍の勝利は約束されたようなものですぞ」
「これだけの兵力差がありながら万全の備えをしているのですから、大勝以外考えられんでしょ」
「問題など起こりようもありません」
開戦が近づくにつれ増していく、この空気感。
正直言って、好ましくないな。
できれば改善したいところだが……。
普段から女性である私のことを侮っている彼らに、開戦直前の今、自制の言葉を投げかけたところで響くとは思えない。それどころか、反発を買うだけ。
王家の血を引く公女将軍であり、それなりの実績も上げているゆえ、公の場では私に対し本音を隠し取り繕っているものの、内心は違うのだから。
ならば、今回はこのまま開戦を迎えた方がいい、か。
「間違いなく楽勝ですよ」
「……そう願いたいものだ」
「イゾリンデ将軍は心配性ですなぁ」
「……」
「武骨な我らではそこまでの不安を持てませんが、やはり将軍は違うようで」
「はは、女性特有のものかもしれませんぞ」
「……」
「とにかく、心配は無用です」
「その通り。我らに任せておけば開戦と同時に勝利を手にすることができますからな。公女将軍様はゆっくり見物していてください」
言葉を選びつつも、この発言の数々。
相変わらず失礼な輩が多い。
開戦前でなければ、嫌味の1つでも言ってやりたいところだ。
「おぬしら、口が過ぎるぞ」
それでもまあ、中にはこういう部隊長もいる。
「何だと!」
「陛下から任を授けられた上官に対する態度ではないと思うが」
「っ!」
希少な援護射撃は心地良くもありがたい。
ただし、この場面での揉め事はごめんこうむりたいな。
「今は開戦前だ。それくらいにしておけ」
「……」
「……」
「……」
「……」
慢心も過信も褒められたものではない。
油断して良いことなど1つも存在しない。
その上、内輪もめなど……。
「各自、開戦に備えるように!」
このような中途半端な姿勢が良くなかったのか。
開戦後は、狙いが外れてばかり。
特注の盾は簡単に破壊され、先鋒の足は止められ。
西の挟撃部隊は抑え込まれ、南の奇襲隊に魔物まで制圧されてしまった。
対して、敵の魔法の矢はいまだ尽きず。
恐ろしい爆発を引き起こす魔道具まで。
「……」
準備は万端。
敵の戦力分析も十全だったはず。
なのに……。
損害は甚大。
常識的な許容量を既に超過している。
はは……。
認めるしかないか。
私の読みが甘かったことを。
「……」
王家の意向はもちろん承知している。
強く望んでいることも分かっている。
だが、今はもう……落としどころを考えるべきだろう。
幸いなことに、兵員には余裕がある。
明日以降に巻き返すことも十分可能。
ならば、一度退いて再戦を選んだ方がいい。
ただ、私と同様に王家の要望を理解している部隊長たちの多くは……。
「止まれ! 止まるんだ!」
「敵は少数だ! 怯むんじゃない!」
続戦の意志に変化はないようだ。
「「「「「「「おお!」」」」」」」
扇動の効果も開戦当初よりは落ちたとはいえ、まだそれなりの効力を発揮している。
「進めぇ!」
「「「「「「「おう!」」」」」」」
難しいところだな。
「リヒャルド様!」
「……」
トゥオヴィか?
戦闘中に持ち場を離れるとは、珍しい。
「どうしたのだ?」
「僭越ながら……具申よろしいでしょうか?」
これもまた珍しい。
遠征に帯同している女性小隊長は貴重ゆえ、それなりに言葉を交わす仲ではあるが……。
現状を思い知らされるな。
「申してみよ」
「はっ! ワディンの……」
トゥオヴィが口を開こうとした、その時。
「ちょっと待て。あれは何だ?」
中空を翔ける物体が目に入ってきた。
魔法の矢ではない。
小さな球体だ。
「リヒャルド様?」
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少し離れた地点に落下、した次の瞬間。
ドッゴォォォーーーン!!!
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