30年待たされた異世界転移

明之 想

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第8章 南部動乱編

想い

<和見幸奈視点(姿はセレスティーヌ)>



 心の奥底に隠れていた表現しがたい想い、感情。
 それが違和感を伴って溢れ出てくる。
 戦勝の場面で、どうして……。

 それに、このベニワスレ。
 右手に握りしめたベニワスレの一枝。
 どういうわけか、淡い紅色の花弁が気になって仕方がない。


「セレスティーヌ様、大勝おめでとうございます」

 嬉々とした表情で頭を下げているのは、ルボルグ隊長だ。

「セレスティーヌ殿、ワディンとエンノアの勝利ですぞ」

 ゼミアさん。

「「「「「おめでとうございます」」」」」

 みんな、とってもいい顔をしている。

「……ありがとう。皆さんのおかげです」




*********************




「おう、戻ったか?」

「コーキ先生、ご無事ですか?」

 王軍本陣への追撃から戻った剣姫と俺、ノワールを真っ先に迎えてくれたのは、いつものメンバー。皆、満面の笑みを浮かべている。

「ああ、問題はない」

「コーキと剣姫とノワールなら、怪我なんかしねえだろ。で、どうだった?」

「見ての通り、敵全軍を潰走させ殿しんがりに打撃を与えることにも成功した」

 殿に対しては深追いを避け、魔法攻撃とノワールの黒炎だけの攻撃だったが、それなりの損害を与えることはできたはず。

「おう、やってくれたな」

「さすが先生です」

「コーキさんなら、楽勝だよなぁ」

「それは違う。イリサヴィア様とノワールの助力があったからこその戦果だ」

「まあそうだろうけどよぉ。にしても大したもんだぜ」

「ヴァーン殿の言う通り。コーキ殿には感謝の言葉もございません」

「いえ……」

 ここにいる皆は、エビルズピークで剣姫に酷くやられた過去を持つ。
 どうしても彼女への評価が低くなってしまうのだろう。

「それで、皆も大丈夫なのか? 負傷しているなら治療するが?」

「ああ、治療が必要なやつらは奥で治療してる。俺たちは問題ねえ」

「そうか」

 確かに、いつものメンバーには負傷など見あたらない。
 近くにいる他の騎士たちも同様。

「コーキさんのおかげですよ」

「魔法矢と爆弾がなかったらと思うと……。ほんと、助かりました!」

 エンノアの多くも問題ないようだ。
 皆、活気にあふれている。

 間違いなく疲弊しているだろうに。
 戦勝の高揚が、そうさせているんだろうな。

 そんな皆に比べて幸奈は……。

「コーキさん……」

 シアの後ろから、こちらを見つめているその様子。
 やはり、何かがおかしい。
 初めて戦争を目の当たりにしたから、かもしれないが……。

「コーキさんに怪我がなくて良かったです」

 少々おかしい所があるとはいえ、今はそんなことより無事を喜ぶべき。

「セレスティーヌ様こそ、ご無事で何よりです」

 幸奈を護ることができて、本当に良かった。
 心底そう思っているのだから。

「コーキさんのおかげです」

「……そうですよ。あの時の先生は凄かったですから」

「シア殿の言う通りだ。あの時の一撃、枝ごと叩き斬ったあの一撃は凄まじかったぞ」

「私もそう思う」
「俺も見てたぞ。あれは凄かった」
「ほんとにな」
「ああ、凄かった」

 周りのワディン騎士たちも口々にそんなことを。

「まっ、俺たちも良くやったけどな」
「お前は、大したことしてねえだろ」
「やったっての」
「いや、いや」

「……」

 一種の躁状態だな。
 まっ、あの大軍を退けることに成功したんだ。
 浮かれるのも仕方ないか。

「ところで、その2人は?」

 俺の後ろに座っている縄で拘束された2人。
 彼女たちにヴァーンが近づいていく。

「何者だ? 部隊長クラスか? それとも?」

「1人は王軍の小隊長、そしてもう1人は……総指揮官だ」



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