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第8章 南部動乱編
弛緩
<メルビン視点>
「アイスタージウスは、もう黒都を掌握してんのかよ?」
「おそらくな」
「ってことは、そう遅くはならねえ、か?」
「そういうことだ」
「……分かった。テポレンのあとは黒都で一仕事してやらぁ」
「しっかりやれよ」
「言われるまでもねえ。って、俺の仕事はいつも完璧だろうが」
「……」
確かに。
イリアルはいつも文句ばかり言っているものの、仕事だけは卒なくこなす。
実務能力に優れた欲望優先主義者だからな。
「で、黒都の件にもボスは関わってんのかよ?」
「それについては聞いていない」
昨夜話した時は、何も言ってなかった。
とはいえ、あの方のことだ。
何かしている可能性も……。
「そうか。で、他に新しい指示は? メルビンは昨日ボスに会ってんだろ?」
「お前の仕事はさっきの話で全てだ。あとは、臨機応変に動いてくれ」
「オーケー。じゃ、黒都の夜を楽しませてもらうぜ」
「程々にな」
「おう」
これで、イリアルも黒都できっちり働いてくれるはず。
問題は俺の仕事だろうな。
「で、そっちはどうなってんだ?」
「仕込みは進んでいる」
「トゥオヴィの件だぞ」
「ん? ああ、それも何とかなるだろ」
「おい、メルビン!」
「心配するな。おまえの敬愛する上官は必ず助けてやる」
「なっ! 敬愛なんてしてねえわ!」
「ふっ、そうか」
「何笑ってやがる?」
「笑ってなどいないぞ」
「この野郎……」
「とにかく、多少傷はつくだろうが救ってやるから。イリアルは安心して黒都に向かえばいい」
「……そうかよ」
「ああ」
「油断だけはすんなよ。厄介な相手ばかりだからな」
「分かってる」
冒険者コーキにエンノアの異能集団。
本当に厄介な相手だ。
普通に動けば、かなり難易度の高い仕事になるだろう。
が、こっちには信頼という強い武器とボスから教わった秘策がある。
大きな問題はないはずだ。
*********************
ベニワスレの大木の下で恥ずかしいところを見られてしまった俺と幸奈だったが、俺と違い幸奈は平然としたもので。
「皆様、今日もお疲れ様でした」
「セレスティーヌ様こそ、お疲れでしょう。少しお休みください」
「わたしは平気ですよ」
セレス様を冷静に演じている。
「騎士の皆さんやエンノアの方々に比べたら、何もしていないようなものですので」
「そんなことは……」
「とにかく、疲れているのは皆さんの方ですから。あまり無理はしないでくださいね」
これまで同様、セレス様と幸奈が混じり合ったような様子で皆に話しかけている。
ほんと、上手くセレス様をやっていると思う。
たいしたもんだよ。
それに比べ、こっちときたら。
地下に戻る道中ずっとヴァーンに冷やかされ続け、シアには分かったような笑顔ばかり向けられ、ディアナからは冷たい目で見られ。今も地下で……。
ばつの悪いことこの上ない。
何というか……まいってしまう。
まあ、それでも。
昨日までの極限状態に比べたら、今は天国みたいなもの。
こんな時間でも十分ありがたい。
貴重な時間だよ。
それに何より、幸奈とのこともある。
「……」
まずいな。
頭も体も緩んでしまう。
このまま弛緩が止まらなくなりそうだ。
ただ……。
そう気を緩めていい状況でもないからなぁ。
麓から王軍が消えたとはいえ、今はまだ先なんて見通せないのだから。
「アイスタージウスは、もう黒都を掌握してんのかよ?」
「おそらくな」
「ってことは、そう遅くはならねえ、か?」
「そういうことだ」
「……分かった。テポレンのあとは黒都で一仕事してやらぁ」
「しっかりやれよ」
「言われるまでもねえ。って、俺の仕事はいつも完璧だろうが」
「……」
確かに。
イリアルはいつも文句ばかり言っているものの、仕事だけは卒なくこなす。
実務能力に優れた欲望優先主義者だからな。
「で、黒都の件にもボスは関わってんのかよ?」
「それについては聞いていない」
昨夜話した時は、何も言ってなかった。
とはいえ、あの方のことだ。
何かしている可能性も……。
「そうか。で、他に新しい指示は? メルビンは昨日ボスに会ってんだろ?」
「お前の仕事はさっきの話で全てだ。あとは、臨機応変に動いてくれ」
「オーケー。じゃ、黒都の夜を楽しませてもらうぜ」
「程々にな」
「おう」
これで、イリアルも黒都できっちり働いてくれるはず。
問題は俺の仕事だろうな。
「で、そっちはどうなってんだ?」
「仕込みは進んでいる」
「トゥオヴィの件だぞ」
「ん? ああ、それも何とかなるだろ」
「おい、メルビン!」
「心配するな。おまえの敬愛する上官は必ず助けてやる」
「なっ! 敬愛なんてしてねえわ!」
「ふっ、そうか」
「何笑ってやがる?」
「笑ってなどいないぞ」
「この野郎……」
「とにかく、多少傷はつくだろうが救ってやるから。イリアルは安心して黒都に向かえばいい」
「……そうかよ」
「ああ」
「油断だけはすんなよ。厄介な相手ばかりだからな」
「分かってる」
冒険者コーキにエンノアの異能集団。
本当に厄介な相手だ。
普通に動けば、かなり難易度の高い仕事になるだろう。
が、こっちには信頼という強い武器とボスから教わった秘策がある。
大きな問題はないはずだ。
*********************
ベニワスレの大木の下で恥ずかしいところを見られてしまった俺と幸奈だったが、俺と違い幸奈は平然としたもので。
「皆様、今日もお疲れ様でした」
「セレスティーヌ様こそ、お疲れでしょう。少しお休みください」
「わたしは平気ですよ」
セレス様を冷静に演じている。
「騎士の皆さんやエンノアの方々に比べたら、何もしていないようなものですので」
「そんなことは……」
「とにかく、疲れているのは皆さんの方ですから。あまり無理はしないでくださいね」
これまで同様、セレス様と幸奈が混じり合ったような様子で皆に話しかけている。
ほんと、上手くセレス様をやっていると思う。
たいしたもんだよ。
それに比べ、こっちときたら。
地下に戻る道中ずっとヴァーンに冷やかされ続け、シアには分かったような笑顔ばかり向けられ、ディアナからは冷たい目で見られ。今も地下で……。
ばつの悪いことこの上ない。
何というか……まいってしまう。
まあ、それでも。
昨日までの極限状態に比べたら、今は天国みたいなもの。
こんな時間でも十分ありがたい。
貴重な時間だよ。
それに何より、幸奈とのこともある。
「……」
まずいな。
頭も体も緩んでしまう。
このまま弛緩が止まらなくなりそうだ。
ただ……。
そう気を緩めていい状況でもないからなぁ。
麓から王軍が消えたとはいえ、今はまだ先なんて見通せないのだから。
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