30年待たされた異世界転移

明之 想

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第8章 南部動乱編

影響?

「あっちに戻って、功己!」

「……」

 そんなに焦ってどうしたんだ?
 魂替は成功したんだろ?

「今すぐよ!」

 それとも、まさか失敗している?

「早く!」

「……何かあったのか?」

「時間がないの! セレスさんのもとに行って!」

 こっちの問い掛けに応えることなく、ただ急かすだけ。
 無事に日本に戻って来ることができたのに、喜ぶ様子なんて微塵もない。

「功己!」

 そうは見えないが、魂替に問題があったんだな。

「幸奈、少し落ち着いてくれ」

「でも!」

「これじゃ話が進まない。まずは、少しでいいから気を静めるんだ」

「……」

 俺の言葉が届いたのか、幸奈の興奮が若干収まったように見える。

「事情を説明してくれないか?」

「……よく分からない。けど、時間がないことだけは確かだから、功己早く戻って!」

 よく分からないとは、いったいどういうことなのか?

「ゆっくり話している場合じゃないの! だから、お願い!」

「……分かった、急いで戻る。ただ、今は異世界間移動を使えないんだ」

「そんな……まだ時間制限中?」

「ああ」

 12時間の制限時間を消化しきれていない。
 ただ、それもごく僅かなもの。
 少し待てば移動可能になる。
 
「でも、すぐだよね?」

 時計が正確なら。

「あと5分だな」

「そんなに! 間に合わないかも……」

 5分すら待てない状況とは。
 こちらにも焦りが伝染しそうだぞ。
 ただ。

「5分といっても、あっちでは100秒だからな」

 間に合うだろ?

「それだったら……」

 100秒でギリギリなのか。
 ならば、なおのこと。

「あっちに戻り次第動けるように、少しで構わないから状況を説明してくれ」

「よく分からないけど……いい?」

「ああ」

「功己と話した通り、予定時間に部屋で魂替を使ったの。でも、上手く使えなくて」

「……」

「何度か試している内に急に苦しくなって」

 急に苦しく?
 宴での幸奈は元気だったよな?

 魂替試行中にたまたま体調が悪化したのか?
 魂替の影響なのか?

「立ってられなくて床に手をついてしまったわ。それで、その後は、気づいたら」

「……」

「目の前に功己がいて……。わたし、魂替を発動したんだよね?」

「ああ、間違いない」

 苦しみながらも魂替発動に至ったんだ。
 入れ替わることができたんだ。

 その結果にひとまずは安堵してしまうが。

「今の幸奈は平気なのか?」

 後遺症なんてないだろうな?

「うん、平気みたい」

 よし。
 これで、安心できる。

「でも、あっちのセレスさんが心配で」

「……」

「今も苦しんでいるような気がするから」

 一連の流れを客観的に考察すると。

「さっきの苦痛は入れ替わる直前のもの。つまり、状況的には魂替が影響してる可能性が高いだろ?」

「……」

「それに、今の幸奈は健常に戻っている。体も魂も病んでいるわけじゃない。だったら、あちらのセレス様の苦痛も消えてるんじゃないのか?」

「それは、そうだけど……」

 幸奈の不安は消えないみたいだ。

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