30年待たされた異世界転移

明之 想

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第8章 南部動乱編

後悔

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「時間がどうかしたの?」

「いや……少し気になることがあってな」

 なぜ性能を越えることができたのか?
 時間遡行では異世界に渡れないから?
 それとも単なる誤差?

 理由は分からないし、正解を見つけることもできない。
 が、問題なんてない。
 むしろ好都合だ。

「やっぱり、功己おかしいわよ」

「……」

「でもまあ、聞いても教えてくれないだろうし」

 悪い。

「仕方ない。今回は見逃してあげるわ」

 助かるよ。

「で、日本に戻らないの? 体には問題ないんでしょ?」

「それは……」

 予定では、一度目の遡行後は日本にいたはず。
 それから連続で時間遡行を使いエンノアに戻るつもりだった。
 全てはセレス様を救うため。

 けれど、今の俺は4時間半前のエンノアにいる。
 元気なセレス様の姿が目の前に存在している。

 だったら、二度目の遡行をする必要はない。
 異世界間移動もできるわけがない。
 ここで日本に渡ると、4時間後に同じ結末を迎えてしまうだけだから。

 セレス様は……日本で古野白さんたちと一緒にいるはず。
 もちろん、無事だろう。
 セレス様も幸奈も今は健在。

 それならば、俺がすることはひとつ。
 あの悲劇を防ぐだけ。

「功己?」

「日本への移動は、延期しようと思う」

「ええ! さっきあれだけ話したのに、どうして?」

「やり残したことを思い出したんだ」

「そんな、急に?」

 こっちとしては矛盾のない行動だが、幸奈には不自然に映るよな。

「悪い。今は言えない。ただ、これには確かな理由があるんだ」

「……」

「俺を信じてくれないか?」

「さっきの時間の件と関係あるんでしょ?」

「ああ」

「分かった。今回は見逃すって言ったもんね」

「ありがと、幸奈」

「お礼を言われるほどじゃないけど……わたしは功己のこと信じてるしさ」

「……俺も幸奈のことは信用している」

「へっ、へえ~。そうなんだぁ」

「もちろんだ」

「……」

「どうした?」

「えっ! 何でもないよ。で、えっと……」

「ん?」

「その……日本に戻らないなら、これからどうするの?」

「そうだな……」

 本来なら、この後にセレス様の身に起きるであろう悲劇。
 それを繰り返さないためには何をすればいいか?

 いや、違うな。
 ここにはセレス様はいないんだ。
 なら、あの悲劇は幸奈を襲うことになる。

 何としても幸奈を護らないと!

 ただ……。

 セレス様が倒れた原因は不明のまま。

「……」

 セレス様の真っ赤に染まったあの姿。
 魔落脱出後の悪夢のような状況と酷似していた。

 とはいえ、全く同じものかと言われれば……。
 その可能性は低くないと思うが、明確な判断はできない。
 前回同様の激しい咳症状があったのかも分かっていないのだから。

 今の時点で判明している類似点は真っ赤に染まったさっきの様子と、ともにテポレン山で起きたという事実だけ。

 魂替で幸奈が日本に戻って来た時、もっと話を聞くべきだったんだ。
 せめて、咳があったのかどうかだけでも。
 幸奈はあんなに焦っていたのに、俺が軽視してしまったから。

 今さら悔やんでも遅いが、本当に失敗だった。

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