30年待たされた異世界転移

明之 想

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第8章 南部動乱編

覚醒

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「記憶が戻られた……」

「セレスティーヌ様の記憶が……」

「本当に……」

 シア、アル、ディアナ、ユーフィリアが震えている。
 ヴァーンは固まっている。

 俺も……別の意味で動揺が隠せない。

「みんなには苦労をかけたけれど、もう心配は要らないから」

「「「セレス様!」」」

 この口調、雰囲気。
 明らかに昨日までと違う。

 隠そうとしても隠しきれない高貴な佇まい。
 洗練された所作。
 気品……。

「セレス様の記憶はもう戻らないのかと、わたし……」

「泣かなくていいのよ、シア」

「でも……」

「シアは本当に優しい娘ね」

「そんな、わたしなんて……」

 セレス様とシアの間に流れる柔らかな空気。
 寝室が温かくなっていくようだ。

「セレスティーヌ様、無事の御帰還、心よりお喜び申し上げます」
「……申し上げます」

「ディアナ、ユーフィリア、ありがとう」

「ほんと良かったぜ、セレスさん」

「ヴァーンさん、今さらですが、ここまで力を貸していただいたこと心より感謝いたします」

「水臭いことは言いっこなしですって。俺も好きでやってることですしね」

「それでも、感謝くらいはさせてください」

「まあ、それは……」

 セレス様の感謝の微笑みにヴァーンは言葉も出てこない。

「セレス様、記憶が戻られたのでしたら、また頭痛はしませんか? 少し横になられた方が?」

「大丈夫よ」

 記憶が戻ったであろうセレス様を皆が心配そうに見つめている。

「ほんと平気だから。それより、今はコーキさんに話したいことがあるの」

「先生に?」

「ええ、少しふたりにしてもらってもいいかしら?」

「もちろんです」

「皆も?」

「セレスティーヌ様……私が同席しては駄目なのでしょうか?」

「ごめんね、ディアナ。緊急の話なのよ」

「……承知しました」

「コーキ任せたぞ」

「……ああ」



 シア、アル、ディアナ、ユーフィリア、ヴァーンの5人が室外に出て、残っているのは俺とセレス様だけ。

「セレス様、で間違いありませんか?」

「はい」

 今、俺の目の前にいるのは魂替で帰還したセレスティーヌ様本人。
 ここまで長かったが、ようやく2人の魂を入れ替えることができたんだ。

 とはいえ、疑問は残ったまま。

 どうして幸奈とセレス様が入れ替われたのか?
 媒介物に魔力が不足している状態で魂替は発動できないはずなのに?
 魂替発動で世界を渡るために魔道具は必要なかったと?

 理解できないことも多い。
 が、事実は事実。
 何より鑑定がそう告げている。

「無事に戻って来られたのですね」

「突然で驚きましたが、なんとか戻ることができたようです」

 想定外のセレス様の帰還。
 いつも通りのセレス様の声音。
 その現実を前にすると、喜びが疑問を覆いつくしていく。
 聞きたいことが溢れてくる。

 お疲れ様でした。
 お身体は大丈夫ですか?

 記憶はどうなっています? 
 今、こちらは大変な状況なんですよ。

 辺境伯様は……。

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