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第8章 南部動乱編
並行世界 2
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「少し前の話になりますが」
昨日の内容以外にも何か他に?
「今の私と同様、その世界の私も王軍のワディナート侵攻に際して領都を脱出し、テポレン山を上りオルドウに向かっていました。その後のコーキさんとの崖下での出会いもほぼ同じで、並行世界というより自分自身の過去を見ているようでした」
「……」
「でも、そこからが違ったんです。魔落でコーキさんと一緒に過ごしている時、私が、その、自己嫌悪に陥ってしまって……」
これは、一度目の魔落?
「実際の私は魔落でそんな精神状態にはならなかったのに、並行世界の私はどうしようもなく自分が嫌になってしまい、醜態を……」
「……」
「それで、コーキさんに対しても色々と酷いことを言ったんです。本当に酷いことを。それなのに、コーキさんは私を受け止めてくれました」
まず間違いない。
セレス様が俺に殺してほしいと言った一度目の魔落だろう。
「私を励ましてくれました。ありのままの私でいいと導いてくれました」
あの時……。
「とっても嬉しかった。真っ暗だった私の世界に光が溢れてきました。こんな私が生きてもいいんだって! 本当に、本当に嬉しかったんです。まるで自分のことのように……」
「……」
「この感覚は、幸奈さんの感情との同化に近いかもしれません」
異なる時間軸の自分の感情を共有している?
そういうことなのか?
「それからも現実とは大きく違いました」
「……」
「なんと私がテポレン山で亡くなってしまうんです。希望を見つけたばかりの私がすぐに……。並行世界とはいえ、酷い話ですよね」
酷い。
そう、俺にとっては幻視世界じゃない。酷い現実だった。
セレス様を救えなかったあの麓でのこと。
今も脳裏に焼きついている。
「でも、その時」
「……」
「その最期を迎える時、コーキさんは私のために涙を流してくれました」
「……」
「痛くて、辛くて、息もできなくて、とっても苦しかったけど、コーキさんが私を包んでくれました」
何もできなかった。
ただ腕に抱くことしかできなかったんだ。
「だからあの世界の私は……コーキさんの優しさと温もりの中で旅立つことができたんです」
「……」
「苦しかったはずなのに……あの瞬間、私は幸せでした。死の恐怖や苦しみは消え、幸せな気持ちでいっぱいだったから」
死の間際に幸せだなんて……。
「ひとつ心残りだったのは、コーキさんのこと。ひとりで残していくのが辛かった……」
「……」
「それでもやっぱり、あの世界の私は幸せの中で旅立つことができたんだなと。ほんの少しだけ羨ましく思ってしまいました」
「……」
「あの世界での自分の想いをまるで私自身のもののように感じながら羨ましくも思うなんて、おかしいですよね」
「……」
「本当に矛盾してますけど、2つとも私の感情なんです」
「そう、ですか」
「はい」
迷いのない純粋な瞳。
一目見るだけで理解できる。
「だから、ひとことだけ言わせてください」
「……」
「ありがとうございました、コーキさん」
「!?」
「並行世界の私も今の私も、心からあなたに感謝しています」
「セレス様……」
一度目も二度目も、俺はあなたを救えなかった。
なのに……。
なのに、あの時間をまたあなたと共有できることに喜びを感じてしまう。
浅ましい思いを抱いてしまう。
そんな俺のことを、あなたは……。
「感謝しています!」
「……」
力強く言い切ったセレス様が、儚く消え去りそうな笑みを浮かべている。
「もちろん、分かっています。あのコーキさんはここにいるコーキさんとは別人ですし、私も今の私じゃありません。それは分かってるんです。でも、お礼が言いたくて」
違う。
俺は俺なんだ。
けど……。
昨日の内容以外にも何か他に?
「今の私と同様、その世界の私も王軍のワディナート侵攻に際して領都を脱出し、テポレン山を上りオルドウに向かっていました。その後のコーキさんとの崖下での出会いもほぼ同じで、並行世界というより自分自身の過去を見ているようでした」
「……」
「でも、そこからが違ったんです。魔落でコーキさんと一緒に過ごしている時、私が、その、自己嫌悪に陥ってしまって……」
これは、一度目の魔落?
「実際の私は魔落でそんな精神状態にはならなかったのに、並行世界の私はどうしようもなく自分が嫌になってしまい、醜態を……」
「……」
「それで、コーキさんに対しても色々と酷いことを言ったんです。本当に酷いことを。それなのに、コーキさんは私を受け止めてくれました」
まず間違いない。
セレス様が俺に殺してほしいと言った一度目の魔落だろう。
「私を励ましてくれました。ありのままの私でいいと導いてくれました」
あの時……。
「とっても嬉しかった。真っ暗だった私の世界に光が溢れてきました。こんな私が生きてもいいんだって! 本当に、本当に嬉しかったんです。まるで自分のことのように……」
「……」
「この感覚は、幸奈さんの感情との同化に近いかもしれません」
異なる時間軸の自分の感情を共有している?
そういうことなのか?
「それからも現実とは大きく違いました」
「……」
「なんと私がテポレン山で亡くなってしまうんです。希望を見つけたばかりの私がすぐに……。並行世界とはいえ、酷い話ですよね」
酷い。
そう、俺にとっては幻視世界じゃない。酷い現実だった。
セレス様を救えなかったあの麓でのこと。
今も脳裏に焼きついている。
「でも、その時」
「……」
「その最期を迎える時、コーキさんは私のために涙を流してくれました」
「……」
「痛くて、辛くて、息もできなくて、とっても苦しかったけど、コーキさんが私を包んでくれました」
何もできなかった。
ただ腕に抱くことしかできなかったんだ。
「だからあの世界の私は……コーキさんの優しさと温もりの中で旅立つことができたんです」
「……」
「苦しかったはずなのに……あの瞬間、私は幸せでした。死の恐怖や苦しみは消え、幸せな気持ちでいっぱいだったから」
死の間際に幸せだなんて……。
「ひとつ心残りだったのは、コーキさんのこと。ひとりで残していくのが辛かった……」
「……」
「それでもやっぱり、あの世界の私は幸せの中で旅立つことができたんだなと。ほんの少しだけ羨ましく思ってしまいました」
「……」
「あの世界での自分の想いをまるで私自身のもののように感じながら羨ましくも思うなんて、おかしいですよね」
「……」
「本当に矛盾してますけど、2つとも私の感情なんです」
「そう、ですか」
「はい」
迷いのない純粋な瞳。
一目見るだけで理解できる。
「だから、ひとことだけ言わせてください」
「……」
「ありがとうございました、コーキさん」
「!?」
「並行世界の私も今の私も、心からあなたに感謝しています」
「セレス様……」
一度目も二度目も、俺はあなたを救えなかった。
なのに……。
なのに、あの時間をまたあなたと共有できることに喜びを感じてしまう。
浅ましい思いを抱いてしまう。
そんな俺のことを、あなたは……。
「感謝しています!」
「……」
力強く言い切ったセレス様が、儚く消え去りそうな笑みを浮かべている。
「もちろん、分かっています。あのコーキさんはここにいるコーキさんとは別人ですし、私も今の私じゃありません。それは分かってるんです。でも、お礼が言いたくて」
違う。
俺は俺なんだ。
けど……。
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