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第8章 南部動乱編
疑惑
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俺が犯行に関わっている可能性。
この件については以前も考えたことがあるが、その時も今も一貫してあり得ないことだと思っている。俺自身にそんな記憶など全く残っていないし、動機もあるわけがないのだから。
それに、セレス様がエンノアの室内で倒れた時、俺は日本にいたじゃないか。アリバイも万全だろ。
ただ、俺の頭の中にある記憶が偽物だとしたら……。
ここはエンノア。精神操作できる者が多数存在する地。
しかも、俺は記憶を改竄された過去を持つ。
犯行に関わっているはずがないと思いたいが、何があっても不思議じゃないとも感じてしまう。
「……」
宴の夜、全てを終えた後に俺の記憶が歪められた可能性も。
そう、完全には否定できないんだ。
とはいえ、その可能性は限りなく低いだろう。
今のエンノアが俺に精神操作を仕掛けるとは思えないし、こちらもある程度の耐性は習得済み。さらに、俺にはセレス様を害する理由がない。意志に反して行動を起こさせるほどの強い精神操作は神業に近いという話を耳にしたこともある。
何より、そんな蛮行を犯して今も平気でいられるとは思えない。
戦争でも決闘でもないのに、俺が人を殺めるなんてこと……。
「っ!?」
何だ、これ!?
「コーキさん?」
頭が痛い。
割れるように痛い。
突然の激痛に膝が崩れてしまう。
「コーキさん!?」
「うぅ……」
「コーキさん! どうしたんです? コーキさん!?」
セレス様が、地に膝をついてしまった俺の手を取ってくれる。
「……すみません、急に頭痛が」
理由は分からないが、一瞬たりとも痛みが去ってくれない。
治癒魔法を使うための集中ができない。
「頭が痛いんですね! 分かりました。すぐに治療を!」
セレス様が治療を?
「……祝福!」
そうだ。
神娘固有のスキル祝福を使えるんだった。
「……」
セレス様の手から柔らかく優しい波動が伝わってくる。
それが俺の頭を包み込み。
痛みが……。
「いかがでしょう?」
「……もう痛みはありません」
若干違和感が残る程度だ。
「ああ、よかったぁ」
セレス様の曇っていた顔が一変。安堵の表情を見せてくれる。
「苦しむコーキさんを見て、犯人の手が伸びたのかと、狙いを変えたのかと……」
なっ!
その可能性も?
いや……さすがに違うか?
敵は対象を死に至らせる手段を持っているはず。
俺を狙ったのなら、頭痛で済むわけないよな?
「この頭痛は例の犯人によるものではないと思います」
「でしたら、なぜ急に激痛を?」
正確な原因は分からない。
ただ、自分の犯行を疑っている最中に頭痛が始まったということは?
「……少し疲れていたようです」
「疲れですか?」
疲労が溜まっていたというのも嘘じゃない。
それが頭痛の直接の原因とは限らないが。
「疲れと言っても軽いものですよ。それにもう、セレス様の祝福ですっかり回復しましたので」
正直、思う所はあるけれど、ここで考えても答えが出るものじゃないだろう。
ならば、現状はそういうことにしておいた方がいい。
「ほんとに?」
「ええ。疲労も痛みも今は全く感じません」
「祝福で完治できたのですね?」
「はい、全てセレス様のおかげです。心から感謝いたします」
「そんな……当然のことをしただけですから。それより、コーキさん、少し休まれた方が良いのではありませんか?」
「いえ、祝福のおかげで私の方は万全です。ですので、もう少し話を進めましょう」
この件については以前も考えたことがあるが、その時も今も一貫してあり得ないことだと思っている。俺自身にそんな記憶など全く残っていないし、動機もあるわけがないのだから。
それに、セレス様がエンノアの室内で倒れた時、俺は日本にいたじゃないか。アリバイも万全だろ。
ただ、俺の頭の中にある記憶が偽物だとしたら……。
ここはエンノア。精神操作できる者が多数存在する地。
しかも、俺は記憶を改竄された過去を持つ。
犯行に関わっているはずがないと思いたいが、何があっても不思議じゃないとも感じてしまう。
「……」
宴の夜、全てを終えた後に俺の記憶が歪められた可能性も。
そう、完全には否定できないんだ。
とはいえ、その可能性は限りなく低いだろう。
今のエンノアが俺に精神操作を仕掛けるとは思えないし、こちらもある程度の耐性は習得済み。さらに、俺にはセレス様を害する理由がない。意志に反して行動を起こさせるほどの強い精神操作は神業に近いという話を耳にしたこともある。
何より、そんな蛮行を犯して今も平気でいられるとは思えない。
戦争でも決闘でもないのに、俺が人を殺めるなんてこと……。
「っ!?」
何だ、これ!?
「コーキさん?」
頭が痛い。
割れるように痛い。
突然の激痛に膝が崩れてしまう。
「コーキさん!?」
「うぅ……」
「コーキさん! どうしたんです? コーキさん!?」
セレス様が、地に膝をついてしまった俺の手を取ってくれる。
「……すみません、急に頭痛が」
理由は分からないが、一瞬たりとも痛みが去ってくれない。
治癒魔法を使うための集中ができない。
「頭が痛いんですね! 分かりました。すぐに治療を!」
セレス様が治療を?
「……祝福!」
そうだ。
神娘固有のスキル祝福を使えるんだった。
「……」
セレス様の手から柔らかく優しい波動が伝わってくる。
それが俺の頭を包み込み。
痛みが……。
「いかがでしょう?」
「……もう痛みはありません」
若干違和感が残る程度だ。
「ああ、よかったぁ」
セレス様の曇っていた顔が一変。安堵の表情を見せてくれる。
「苦しむコーキさんを見て、犯人の手が伸びたのかと、狙いを変えたのかと……」
なっ!
その可能性も?
いや……さすがに違うか?
敵は対象を死に至らせる手段を持っているはず。
俺を狙ったのなら、頭痛で済むわけないよな?
「この頭痛は例の犯人によるものではないと思います」
「でしたら、なぜ急に激痛を?」
正確な原因は分からない。
ただ、自分の犯行を疑っている最中に頭痛が始まったということは?
「……少し疲れていたようです」
「疲れですか?」
疲労が溜まっていたというのも嘘じゃない。
それが頭痛の直接の原因とは限らないが。
「疲れと言っても軽いものですよ。それにもう、セレス様の祝福ですっかり回復しましたので」
正直、思う所はあるけれど、ここで考えても答えが出るものじゃないだろう。
ならば、現状はそういうことにしておいた方がいい。
「ほんとに?」
「ええ。疲労も痛みも今は全く感じません」
「祝福で完治できたのですね?」
「はい、全てセレス様のおかげです。心から感謝いたします」
「そんな……当然のことをしただけですから。それより、コーキさん、少し休まれた方が良いのではありませんか?」
「いえ、祝福のおかげで私の方は万全です。ですので、もう少し話を進めましょう」
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