30年待たされた異世界転移

明之 想

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第8章 南部動乱編

疑心

<ヴァーン視点>



 で、エンノアを出た後については、トゥレイズ奪還、領都ワディナート奪還、遠国亡命のほぼ三択。

 亡命はいいとして、奪還はどうなんだ?
 各所に手を回し、下工作もし、それなりに人を集めても、今はこの寡兵だぞ。困難どころじゃねえだろ?

 なのに、可能だと信じてる騎士たちが一定数いるんだからよ。

 俺の想像以上に、南部にはワディンに心を寄せる者が多い。
 王家よりワディン辺境伯家。そう考えている者は少なくないってことか。


「ヴァーン、わたしたちも一度外に出ましょ」

「ん? ああ」

 白熱していた会議も今は中断し、休憩に入っている。
 俺たちも外に出た方がいいな。
 ただ。

「セレスさんは?」

「先生たちがついてるから心配いらないわ」

「そっか」

 コーキとディアナ、ユーフィリア、それにノワールもいる。
 全く問題ねえ。というか、過剰警護だわ。
 こんだけ用心してりゃ、敵も近づけねえって。



「ヴァーンはどう思う?」

 会議場を出て広場の外の空気で深呼吸をしたシアが尋ねてきた。

「どっちの話だ?」

「どっちもよ」

 ワディンの話とセレスさんの話。
 両方ということなら、まずは。

「襲撃の兆しは全くねえ。夜も問題ねえだろ?」

「……うん」

 昼間、俺たちが護衛している間は何も不穏なことは起こっていない。
 シア、ディアナ、ユーフィリアがそばにいる夜も同様。
 3日間怪しいことは微塵もねえんだ。
 とくれば……。

「本当に襲撃者が隠れているのか、あやしいもんだな」

「……」

「シアもそう思うだろ?」

「でも、先生が言うことだから」

 やっぱり。
 内心ではシアも疑ってるか。

「ヴァーン?」

「まあなぁ。コーキがミスすることはあまりねえから、シアの気持ちも分かるけどよ」

「……」

「とはいえ、コーキも人間だぜ。失敗もすりゃ、判断を間違うこともある。今回がそうかもしれねえぞ」

 この件ばかりは、コーキの杞憂に過ぎない。
 今はそう思えちまうんだ。

「実際、事は何も起こっていねえ。コーキが情報を掴んだと言ってるだけ。なら、誤情報の可能性だってある」

「けど……」

 っとに、コーキへの信頼は半端ねえな。
 そういう俺もあいつのことは誰より頼りにしてるんだが。
 ただ、ちっとばかし……。

 妬いちまうぜ。

「……」

「……」

 はあ~。
 やめだ、やめ。
 野郎の嫉妬ほどみっともねえモノねえわ。

「まっ、警戒して問題があるわけじゃないしな。コーキの言う通り、このまま警護すればいいだろ」

「ほんとに? いいの?」

 気を遣わせちまったか?
 カッコわりい話だぜ。

「ああ」

「ヴァーン……」

 こりゃ、話を変えた方がいいな。

「で、ワディンの話だが、シアの考えはどうなんだ?」


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