30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
862 / 1,578
第8章 南部動乱編

ぬくもり

しおりを挟む
<セレスティーヌ視点>



「「「「「おおぉ!!」」」」」
「「「「「やったぞ!!」」」」」
「「「「「ディアナぁぁ!!」」」」」

 ディアナの勝利に周りの騎士たちが大騒ぎしている。

「やったぜ!!」

「セレス様、やりました! ディアナさん、勝ちましたよ!!」

 ヴァーンさんもシアも大喜びだ。

「……そう、ね」

 私も嬉しい。
 ディアナのことを誇らしく思う。

 なのに……。

 この感じは?
 胸に走る鈍痛。
 喉が詰まるような感覚は?

「セレス様?」

「……」

 覚えがある。

「セレス様!?」

 記憶の中、いいえ、幻視で覚えた痛みに似ている。

「……ゴホッ」

 咳?
 この咳……!?

 ディアナの試合に夢中になり過ぎて、違和感に気付けなかった。
 でも、今ははっきりと分かる。
 感じてしまう。

 あっ!?

 自覚した途端、急激に体が重くなって……。


「セレス様、お顔の色が!」

「シア……」

「どうされたのですか? お辛いのですか? セレス様、セレス様!!」

「ゴホッ、ゴホゥッ!!」

「「「セレス様!?」」」

「セレスさん!!」

 シア、アル、ユーフィリア。
 そして、ヴァーンさんが私を覗き込んでくる。

「セレス様……」

 コーキさんは真っ青な表情。
 呆然と立ち尽くしている。
 それでも、こちらに手を伸ばして……。

「……」

 なのに、私は。

「ゴホッ、ゴホッ!」

 上手く喋れない。
 咳が止まらない。

「はあ、はあ……」

 やっぱりだ。
 あの症状に似ている。

「ゴホッ……」

 でも、どうして?
 さっきまで何ともなかったのに?
 何もされていないのに?

「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ!」

 苦しい……。

「「「セレス様!」」」

「治療だ! コーキ、早く魔法を!」

「……」

 温かい光。
 私に降り注いで……。


「あっ」

 少しだけど、呼吸が楽になっていく。

「セレスさん、どうだ? 効いてるか?」

「……はい」

「良かった、コーキの魔法が効いてるぞ!」

 コーキさんの治癒魔法。
 本当に温かい。
 でも、これが幻視と同じ症状なら……。

「セレス様、果実水です。こちらを飲めば咳も和らぐはずです」

「シア……ありがと」

「セレス様……」
 
「うぅ……ゴボッ」

 また咳が。

「ゴホッ、ゴボッ!」

 果実水が喉に入っていかない。

「ゴホッ!」

 杯を持つ手に力が入らない。

「ゴホッ……くるし……ゴホッ、ゴホッ!」

 身体中から力が抜けていく。

「セレス様!?」

 椅子に座っていることもできず、身体ごと地面に倒れて……。

 ガシャーーン!

「「「セレス様ぁぁ!!」」」

「うぅぅ……」

 息ができない。

「ゴホッ、ゴホッ、ゴホゥッ!!」

 口を押さえた掌に血!?
 喀血!!

「はあ、はあ……うぅ……」

 もう、間違いない。

「ゴホッ!!」

 もう動けない。
 もう、もう……。

「魔法だけじゃ駄目だ!」

「薬を、魔法薬を早く!」

「大丈夫です! 今すぐ薬を用意しますから! 薬を飲めば楽になりますから! だからセレス様……」

 手を取ってくれるのは……シア?
 抱えてくれるのは……コーキさん?

「セレス様、これを!!」

 魔法、薬?
 でも……力が……。

「失礼します」

「うっ! ううぅ……ゴホッ、ゴボォ」

 飲ませてくれた?
 コーキさん?

 魔法薬が喉に、胸に沁みていく……。

「セレス様、楽になりましたか? 楽になりましたよね? ねえ、セレス様!!」

「シア……」

 泣かないで。
 少し楽になったから。

「効いてます? セレス様、効いたんですね!」

「セレスさん、大丈夫だ。魔法薬が効けば問題ねえ」

 シア、ヴァーンさん……。

「あり、がとう」

「セレスティーヌ様、大丈夫です。治りますよ!」

「そうです、きっと良くなります!!」

「「「「「セレス様!」」」」」

 みんな……ありがとう。

 でもね……。

 私は知ってるの。
 今は少し楽になってるけど。
 多分……長くはもたない。


「ゴホッ!」

「もう一度魔法薬を!」

「もっと治癒魔法も!」

「ゴホ、ゴホ、ゴホォッ!!」

 手が、地面が、真っ赤に染まる。

「「「「「「セレス様!!」」」」」」

「「「「「「セレスティーヌ様!!」」」」」」

「……」

「……」

「……」

 やっと、戻って来れたのに。
 これからなのに……。

「ゴホッ……」

 まだ、ここにいたい。
 みんなと一緒にいたい!

「ゴホッ!」

「セレス様!!」

 ワディンも……。
 コーキさんとも……。

 もっと、もっと……。

 ここで私は……。

 悔しい……。

「セレス様!!」

「……」

 悔しい。
 寂しい。
 怖い……。

「ゴホォッ!!」

「セレス様ぁ!?」

 シア……。

「セレス様……」

 コーキ、さん?

 顔を見せ、て……。
 触れさせ、て……。

「ゴホッ……」

 暗い。
 あなた、が、見えない。
 ど、こ?

「……さま!!」

 聞こえ、ない……。
 見えな、い……。

「……さま!!」

 手を、あなた、の顔に……あっ?

 あたた、かい。
 これ、は……コーキさん?

 あな、たの、ぬくもり……。

 ぬくもり、が……。

 ……。

 ……。

 ……。




しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

Gランク冒険者のレベル無双〜好き勝手に生きていたら各方面から敵認定されました〜

2nd kanta
ファンタジー
 愛する可愛い奥様達の為、俺は理不尽と戦います。  人違いで刺された俺は死ぬ間際に、得体の知れない何者かに異世界に飛ばされた。 そこは、テンプレの勇者召喚の場だった。 しかし召喚された俺の腹にはドスが刺さったままだった。

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

処理中です...