30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
864 / 1,578
第8章 南部動乱編

ニレキリ

しおりを挟む
「もう、できることはない」

「ちっ!」

「先生……」

 俺だって、助けられるなら助けたい。
 けど、無理なんだ。
 何をやっても無駄だったんだ。

 だから……。

 できることをするだけ。
 誰に何と言われようと!



「「「「「……」」」」」

「「「「「……」」」」」

「「「「「……」」」」」

 ワディン騎士たちから伝わってくる負の感情。
 これまでに感じたことがない重い沈黙。

 そんな空気の中、こちらに歩み寄って来たのはフォルディさん。

「これは……ニレキリの毒症状ではないかと思うのですが」

 心当たりがあるのか?

「確かに、ニレキリに似てるな」
「ああ、俺もそう思う」

「けど、どうして、神娘がニレキリの毒を?」
「誤飲したとか?」

「いや、それはないだろ」
「なら、誰かが……」

 ニレキリの毒。
 聞いたことのない毒だが、エンノアの人たちが頷いている様子を見るに、嘘をついているとは思えない。

「フォルディさん、ニレキリとはどういった毒なのですか?」

「ニレキリはテポレン山に生息している珍しい植物でして、葉と根に毒を含んでいます」

 テポレン山に生息する植物の毒。

「毒を口にすると、このような症状が現れるかと……」

「それは、経口だけでしょうか? 例えば、傷口からなどは?」

「そちらも毒症状は出ます。ただ、今回のような劇症となると、経口の可能性が高いですね」

 セレス様が毒を飲んだということなんだな。

 いや、でも、おかしいぞ。
 この会場でセレス様が口にしたものは、全て事前に鑑定済み。
 毒なんて入ってなかった。

 さっきセレス様が口にしていた飲料にも……やはり毒は見られない。

 いったい、これは?

 まさか、鑑定ができない毒?
 そんなものが存在する?
 それとも……。

 分からない。
 なら、今は他の質問を。

「ニレキリの毒を口にしてから症状が現れるまでの時間は、どれくらいなのでしょう?」

「通常は四半刻から半刻程度ですね」

 なっ!?

「半刻も、ですか?」

「はい」

 まさか、ここまでの遅効性だったとは。
 会場で毒を見つけられないのも当然じゃないか。

「ですので、今回の模擬試合が始まる前に口にされたのではないかと」

「……」

 試合が始まる前。
 その時間なら2刻(4時間)の遡行で防ぐことができる。
 3時間もの余裕がある。

「もちろん、例外はありますよ」

「……それは?」

「まず濃度や量によって違いが出ますね」

「……」

「また、特殊な加工を施せば症状が出るまで数刻ということもあり得ます」

 数刻だって!?

 まずいぞ。
 もし4時間以上だったら、余裕どころじゃない。

「普通はニレキリに加工なんてしませんけど」

 普通はそうなのか。
 なら安心……。

 いや、今回が例外だった場合。
 どれだけの猶予があるのか分からない。
 手遅れの可能性すらある。

「ということで、コーキさん、ニレキリを所持している者がいないか今から調べましょう」

 広場にいる100人以上を調べる?
 いったい何時間かかるんだ?

「……」

 駄目だ、100人も調べてられない。
 時間が気になってしまう。

「コーキさん?」

 残された遡行は1度。
 チャンスは1度だけ。

 だったら、どうする?

 犯人特定を諦めるか?
 原因がニレキリの毒と判明しただけでも良しとするか?
 今すぐ時間遡行を使うべきか?








第8章  完



しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。〜少年アレクの倫理で殴る学園ファンタジー〜

鮒捌ケコラ
ファンタジー
入学式から3週間目にして『退学」を言い渡された。 (早くない?RTAじゃないんだからさ。) 自分で言うのもアレだけど、入学してからは結構真面目に通ってた。 けど、どうやら教員の不況を買ってしまったらしい。 幸か不幸か、退学まで1週間の執行猶予が与えられた。 けど、今更どう足掻いても挽回する事は不可能だろうし、 そもそも挽回する気も起こらない。 ここまでの学園生活を振り返っても 『この学園に執着出来る程の魅力』 というものが思い当たらないからだ。 寧ろ散々な事ばかりだったな、今日まで。 それに、これ以上無理に通い続けて 貴族とのしがらみシミッシミの薬師になるより 故郷に帰って自由気ままな森番に復職した方が ずっと実りある人生になるだろう。 私を送り出した公爵様も領主様も、 アイツだってきっとわかってくれる筈だ。 よし。決まりだな。 それじゃあ、退学するまでは休まず毎日通い続けるとして…… 大人しくする理由も無くなったし、 これからは自由気ままに、我儘に、好き勝手に過ごす事にしよう。 せっかくだし、教員達からのヘイトをカンストさせるのも面白そうだ。 てな訳で……… 薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。 …そう息巻いて迎えた執行猶予満了日、 掲示板に張り出された正式な退学勧告文を 確認しに行ったんだけど…… どういう事なの?これ。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

Gランク冒険者のレベル無双〜好き勝手に生きていたら各方面から敵認定されました〜

2nd kanta
ファンタジー
 愛する可愛い奥様達の為、俺は理不尽と戦います。  人違いで刺された俺は死ぬ間際に、得体の知れない何者かに異世界に飛ばされた。 そこは、テンプレの勇者召喚の場だった。 しかし召喚された俺の腹にはドスが刺さったままだった。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...