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第8章 南部動乱編
ニレキリ
「もう、できることはない」
「ちっ!」
「先生……」
俺だって、助けられるなら助けたい。
けど、無理なんだ。
何をやっても無駄だったんだ。
だから……。
できることをするだけ。
誰に何と言われようと!
「「「「「……」」」」」
「「「「「……」」」」」
「「「「「……」」」」」
ワディン騎士たちから伝わってくる負の感情。
これまでに感じたことがない重い沈黙。
そんな空気の中、こちらに歩み寄って来たのはフォルディさん。
「これは……ニレキリの毒症状ではないかと思うのですが」
心当たりがあるのか?
「確かに、ニレキリに似てるな」
「ああ、俺もそう思う」
「けど、どうして、神娘がニレキリの毒を?」
「誤飲したとか?」
「いや、それはないだろ」
「なら、誰かが……」
ニレキリの毒。
聞いたことのない毒だが、エンノアの人たちが頷いている様子を見るに、嘘をついているとは思えない。
「フォルディさん、ニレキリとはどういった毒なのですか?」
「ニレキリはテポレン山に生息している珍しい植物でして、葉と根に毒を含んでいます」
テポレン山に生息する植物の毒。
「毒を口にすると、このような症状が現れるかと……」
「それは、経口だけでしょうか? 例えば、傷口からなどは?」
「そちらも毒症状は出ます。ただ、今回のような劇症となると、経口の可能性が高いですね」
セレス様が毒を飲んだということなんだな。
いや、でも、おかしいぞ。
この会場でセレス様が口にしたものは、全て事前に鑑定済み。
毒なんて入ってなかった。
さっきセレス様が口にしていた飲料にも……やはり毒は見られない。
いったい、これは?
まさか、鑑定ができない毒?
そんなものが存在する?
それとも……。
分からない。
なら、今は他の質問を。
「ニレキリの毒を口にしてから症状が現れるまでの時間は、どれくらいなのでしょう?」
「通常は四半刻から半刻程度ですね」
なっ!?
「半刻も、ですか?」
「はい」
まさか、ここまでの遅効性だったとは。
会場で毒を見つけられないのも当然じゃないか。
「ですので、今回の模擬試合が始まる前に口にされたのではないかと」
「……」
試合が始まる前。
その時間なら2刻(4時間)の遡行で防ぐことができる。
3時間もの余裕がある。
「もちろん、例外はありますよ」
「……それは?」
「まず濃度や量によって違いが出ますね」
「……」
「また、特殊な加工を施せば症状が出るまで数刻ということもあり得ます」
数刻だって!?
まずいぞ。
もし4時間以上だったら、余裕どころじゃない。
「普通はニレキリに加工なんてしませんけど」
普通はそうなのか。
なら安心……。
いや、今回が例外だった場合。
どれだけの猶予があるのか分からない。
手遅れの可能性すらある。
「ということで、コーキさん、ニレキリを所持している者がいないか今から調べましょう」
広場にいる100人以上を調べる?
いったい何時間かかるんだ?
「……」
駄目だ、100人も調べてられない。
時間が気になってしまう。
「コーキさん?」
残された遡行は1度。
チャンスは1度だけ。
だったら、どうする?
犯人特定を諦めるか?
原因がニレキリの毒と判明しただけでも良しとするか?
今すぐ時間遡行を使うべきか?
第8章 完
「ちっ!」
「先生……」
俺だって、助けられるなら助けたい。
けど、無理なんだ。
何をやっても無駄だったんだ。
だから……。
できることをするだけ。
誰に何と言われようと!
「「「「「……」」」」」
「「「「「……」」」」」
「「「「「……」」」」」
ワディン騎士たちから伝わってくる負の感情。
これまでに感じたことがない重い沈黙。
そんな空気の中、こちらに歩み寄って来たのはフォルディさん。
「これは……ニレキリの毒症状ではないかと思うのですが」
心当たりがあるのか?
「確かに、ニレキリに似てるな」
「ああ、俺もそう思う」
「けど、どうして、神娘がニレキリの毒を?」
「誤飲したとか?」
「いや、それはないだろ」
「なら、誰かが……」
ニレキリの毒。
聞いたことのない毒だが、エンノアの人たちが頷いている様子を見るに、嘘をついているとは思えない。
「フォルディさん、ニレキリとはどういった毒なのですか?」
「ニレキリはテポレン山に生息している珍しい植物でして、葉と根に毒を含んでいます」
テポレン山に生息する植物の毒。
「毒を口にすると、このような症状が現れるかと……」
「それは、経口だけでしょうか? 例えば、傷口からなどは?」
「そちらも毒症状は出ます。ただ、今回のような劇症となると、経口の可能性が高いですね」
セレス様が毒を飲んだということなんだな。
いや、でも、おかしいぞ。
この会場でセレス様が口にしたものは、全て事前に鑑定済み。
毒なんて入ってなかった。
さっきセレス様が口にしていた飲料にも……やはり毒は見られない。
いったい、これは?
まさか、鑑定ができない毒?
そんなものが存在する?
それとも……。
分からない。
なら、今は他の質問を。
「ニレキリの毒を口にしてから症状が現れるまでの時間は、どれくらいなのでしょう?」
「通常は四半刻から半刻程度ですね」
なっ!?
「半刻も、ですか?」
「はい」
まさか、ここまでの遅効性だったとは。
会場で毒を見つけられないのも当然じゃないか。
「ですので、今回の模擬試合が始まる前に口にされたのではないかと」
「……」
試合が始まる前。
その時間なら2刻(4時間)の遡行で防ぐことができる。
3時間もの余裕がある。
「もちろん、例外はありますよ」
「……それは?」
「まず濃度や量によって違いが出ますね」
「……」
「また、特殊な加工を施せば症状が出るまで数刻ということもあり得ます」
数刻だって!?
まずいぞ。
もし4時間以上だったら、余裕どころじゃない。
「普通はニレキリに加工なんてしませんけど」
普通はそうなのか。
なら安心……。
いや、今回が例外だった場合。
どれだけの猶予があるのか分からない。
手遅れの可能性すらある。
「ということで、コーキさん、ニレキリを所持している者がいないか今から調べましょう」
広場にいる100人以上を調べる?
いったい何時間かかるんだ?
「……」
駄目だ、100人も調べてられない。
時間が気になってしまう。
「コーキさん?」
残された遡行は1度。
チャンスは1度だけ。
だったら、どうする?
犯人特定を諦めるか?
原因がニレキリの毒と判明しただけでも良しとするか?
今すぐ時間遡行を使うべきか?
第8章 完
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