30年待たされた異世界転移

明之 想

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第9章 推理編

魔法戦

「……」

 問題はない。
 信じていいんだよな。

「さっきは、ちょっと咳込んだだけですので」

「咳込んだだけ……」

 あの咳は危険なものではなかったと?

「私は健康そのものですよ」

 この言葉に嘘はない、か。

「……」

 良かった。
 何ともなくて、ほんと良かった。
 これで魔落にも行かずに済む。

 が、だからといって、緩んではいられない。
 依然、犯人はこの中にいて、セレス様を狙っているはずなんだ。

 そんな安堵と危惧の中、試合は予定通りに進んでいく。






「「「「「「「「わあぁぁ!!」」」」」」」」

 剣の模擬戦、そして魔法の試合。
 特に問題が起きることもなく過熱を続ける腕試し。

「「「「「「「「おおぉぉ!!」」」」」」」」

 ワディンもエンノアも冒険者も、時に喚声を上げ、時に固唾をのんで観戦している。
 同僚を応援し、相手の技量に拍手を送り、喜び、笑い、悔しがる一体感と臨場感はちょっと他では感じることができないほどだ。

 ひたすらに白熱する時間。
 既に前回経験した時間は終了し、新たな展開が目の前で繰り広げられている。 

「……」

 こうなるともう、模擬試合も無視はできない。
 ある程度は注視せざるを得ない。
 特に魔法戦は流れ弾など不測の事態が起こりやすいのだから、それに紛れて毒が仕込まれる可能も考えて……。


「魔法の模擬戦も悪くないな」
「ああ、なかなか見応えがあるぜ」

「で、次は誰が出るんだ?」
「ユーフィリアだ。ユーフィリアが出るぞ」
「沈黙の魔術士か」
「そいつぁ、楽しみだ」

 アル、ディアナに続いてユーフィリアも出場するのか。
 彼女は模擬戦に興味などないと思っていたが……。
 しかし、沈黙の魔術師とは……。


「先攻はユーフィリア、はじめ!」

 剣の腕試しとは異なり、魔法の模擬戦は実戦形式では行われない。攻撃魔法と防御魔法の強度を争う形で進められる。
 敵の魔法壁などを破壊し防御を突破できれば攻撃側の勝利。攻撃魔法を防ぎきれば防御側の勝利。そんな魔法攻防を3回繰り返し、勝敗を争う。

 もちろん、これは安全性を考慮してのもの。
 実戦形式で攻撃魔法が生身の体に直撃したら無事では済まないからという配慮なのだろう。


「ストーンウォール!」

 まずは防御の展開。
 次いで。

「アイスアロー!」

 攻撃魔法が放たれる。

 ガン!

 ユーフィリアの氷矢が石壁に激突するも、破壊には失敗。
 そのまま壁下に落下した。
 壁の表面は……少し傷がついている程度。

「先勝は防手! 続いて、はじめ!」

 今度はユーフィリアが防御側だ。

「アイスウォール!」

「ストーンボール!」

 ドン!

「「「「「「「おおぉ!」」」」」」」

 2本目も防御側の勝利に終わった。

「共に守りが堅いな」
「ああ、見事な魔法壁だぜ」
「3本目はどうかな?」
「破れねえんじゃねえか」

 こういう形式で進んでいく魔法の模擬戦。
 剣の試合に比べて地味であることは否定できないものの、これはこれで興味深いものがある。

 そういえば、以前ウィルさんと訪れた王都でエリシティア様の館に招待された時。
 宮廷魔術士リリニュスさんの提案で行われた魔術試しも、こんな形式だったか。
 懐かしい……。

 って、余計なこと考えている場合じゃない。
 緩んでる場合じゃない。
 もう一度、気を張って警戒を、そう思ったまさにその時。

 ザシュッ!

 防壁によって進行を逸らされた魔法攻撃が貴賓席に!?

「「「「「危ない!!」」」」」
「「「「「きゃあぁ!!」」」」」

 まるで約束事のように、あの結果を求めているかのように、高速のアイスアローがセレス様に向かって来る!



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