30年待たされた異世界転移

明之 想

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第9章 推理編

干渉


 俺がユーフィリアを警戒?

「眠らないのは、見張るため?」

「……」

 そうだな。
 警戒していない、見張っていないと言えば嘘になる。

 模擬試合で魔法誤射をしたのはユーフィリアなんだ。
 そんな彼女の行動を注視するのは当然だろ。

 とはいえ、彼女が犯人だと考えているわけじゃない。
 これまでの護衛ぶりから彼女の誠実さ、忠誠心は明らかだし、動機もあるとは思えないのだから。
 もちろん、それを知るセレス様も騎士の皆もユーフィリアを心から信頼しているはず。

「違う……あれは狙ったんじゃない」

「……」

「セレス様に魔法を向けるなんてあり得ない」

 俺もそう思う。
 ただ、それなら。

「単なる偶然、事故だったと?」

「……」

 ユーフィリアからの返答はなく、微妙な沈黙だけが返ってくる。

「思う所があるんだな?」

「……上手く言葉にはできないけど」

 彼女が犯人でないのなら、何を感じたんだ?
 対戦相手に問題があったのか?
 あるいは、他者の介在?
 それとも、因果の収束?

「あのアイスアローを撃つ瞬間、いつもと違う感じがした」

「いつもと違う?」

「だから、上手くは説明できない。でも、変な感覚だったのは確か」

「……」

 魔法を使った本人でも理解できない奇妙な感覚?
 まさか。

「魔力を操られた?」

「それはない。そんなことできるとも思えない」

 いや、そうとも限らないぞ。
 この世界には高位魔法も宝具も異能も存在する。
 魔力を操作する術があってもおかしくないだろ。

「ただ、発動の間際で違和感を覚えて、気付けばアイスアローがセレス様のもとに……」

「……」

「発動の時以外は普段通り。それを偶然だというなら、そうなのかもしれない」

「対戦相手におかしいところはなかったのか?」

「なかったと思う」

 模擬戦の相手である冒険者に不審な点はない。
 とすればやはり、彼女の違和感は第三者の介入があったからでは?

「……」

 これまでの犯行はいずれもニレキリの毒によるもの。
 断定はできないまでも、その可能性は高い。
 それゆえ、今回も毒が仕掛けられるはずだった。
 が、こちらの警戒が予想以上だったため方針転換して魔法を遠隔操作したと?

 つまり、ユーフィリアの発動に関与した第三者が犯人?

「アイスアローの件で私が話せるのはそれだけ」

 ユーフィリアの言葉から犯人を特定することはできない。
 それでも、何らかの介入があったことは分かった。
 ニレキリの毒を所持し他人の魔法発動に干渉できる者が、あの場にいたことが。



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