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第9章 推理編
不協和音 3
模擬試合の会場となった地下広場。
あの時はエンノア、ワディン騎士、冒険者、そのほぼ全てが集まっていたはず。
つまり容疑者が大人数であることに変わりはない。
それでも、ニレキリの毒を所持でき他者の魔力を操れる者なんてそう存在するわけがないんだ。なら、この線で特定を進めれば……。
「やっぱり、魔法に干渉できる者がここにいるとは思えない」
こちらの考えを読んだかのように呟くユーフィリア。
宝具や異能がある世界でも、他者の魔法に干渉できないというのが常識なんだろう。
「違和感は勘違いだったかも」
「……」
実際のところ、あれが魔法干渉だったのか単なる偶然だったのか俺にも分からない。ただ、目の前に手掛かりがあるかもしれないのに放置するなんてあり得ないだろ。だから、調べるんだ。
とはいえ、今はユーフィリアとふたりで不寝番の最中。
できることと言えば、彼女から話を聞くことだけ。
「アイスアローの件ついてはよく分かった」
「……」
「ところで、ユーフィリアが怪しいと思う人物はいないのか?」
「……セレス様を狙っている者のこと?」
「ああ」
「ワディンとエンノアにいるとは思えない。冒険者はよく知らないから可能性はある。捕虜2人はもちろん怪しい」
「ワディンの同僚を疑う必要はないんだな?」
「……ない」
ユーフィリアの考えはワディン騎士としては当然のもの。騎士全員がそう答えるであろう回答だ。
「やはり、冒険者と捕虜が怪しいか」
その怪しい2組のうち捕虜たちは模擬試合の会場にいなかった。
となると、残るは……。
まあな。
疑うなら冒険者連中だと俺も思うよ。
思うけれど……。
「もうひとつ怪しいというか……万が一他人の魔法に干渉できる者がいるとすれば」
何だ、心当たりがあるのか?
「可能性という点では……あなたになる」
俺?
俺を疑っている?
「……」
確かに、俺は記憶を改竄された過去を持つ。
しかも、このエンノアで。だから否定はしきれない。
実際、捜査の過程で自分を疑ったこともある。
けど、飛来したアイスアローを叩き斬ったのは俺だぞ。
操ったアイスアローを自分で粉砕するなんて意味ないだろ。
それに、俺はニレキリの存在すら知らなかった。精神操作と言えど、さすがにここまでの書き換えは不可能なはず。何より俺には動機がない。むしろ正反対の気持ちで溢れている。
だからな、あり得ないんだよ。
「魔法干渉できるの?」
「いや、できない」
「……そう」
ユーフィリアの表情が無に戻っていく。
「……」
俺の言葉を信用したのか?
まったく分からない。
「……」
「……」
俺がユーフィリアを疑い、ユーフィリアが俺を疑う。
互いに僅かな疑念かもしれないが、間違いなくそれは存在している。
これまでは不動と思えた関係が、信頼が少しずつ……。
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