30年待たされた異世界転移

明之 想

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第9章 推理編

解除して!

<壬生伊織視点>



「お兄様?」

「……そうだな。私はもう充分に働いたからな」

「ええ」

「あとの処理は、おまえがやっておけよ」

「お任せください。お兄様はごゆるりと」

「ああ」

 兄が2人の異能者を引き連れ、この場を離れていく。
 これで、愚かな邪魔者はいなくなったと。

「さて、吾妻さん、状況を説明していただけますかしら?」

「……4人を捕えている」

「それは聞きましたわ」

「ここに連れてくるべきだったか?」

「ふふ、どうなんでしょ」

「必要なら、今すぐ戻るが?」

「おふたりとも、ちょっと待ってください」

 吾妻の後ろに控えていた空間異能者が慌てている。

「何ですの?」

「さすがに少し休まないと、上手く力を使えませんよ」

「あら、そう?」

「そうなんです。移動はほんと大変なんですから」

 特に人を連れての位相移動は力を大量に消費すると言っていたな。

「ならば、少し休むとしよう。空間に戻るのは、そのあとだ」




*************************

<和見幸奈視点>



「早くふたりを助けなきゃ! 武志もそう思うでしょ!」

「……」

「結界を解いて!」

「……解除はしない」

「このまま放っておけないわ!」

「古野白さんも武上さんも、姉さんを護るために戦ってる。もちろん、僕も。分かるだろ!」

 そんなこと分かってる。
 でも、倒れているふたりを見て何もしないなんて!

「……」

 わたしが外に出ても何もできないかもしれない。
 足手まといになるだけかもしれない。
 けど、テポレン山で発動したあの異能を使えれば。
 少しの間、敵の動きを止めることができるはず。
 その隙に、ふたりを助けることも。

「古野白さんと武上君がこっちに逃げてきたら、結界内に取り込むことはできるかな?」

「無理だ。一度結界を解除したら、すぐに再発動はできない」

「そんな……」

 結界でふたりを護れないなんて。
 敵の動きを止める意味が……。

 いいえ。
 意味は、あるわ。
 まったく動けない敵相手なら、何とかなる。
 わたしでも攻撃できる。

 問題は、今のわたしが異能を使いこなせるか?
 仮に発動したとして、あの恐ろしい異能者を完全に止める力があるのかってこと?

「……」

 分からない。
 けど、ここで黙って見ているよりはまし。

「姉さん?」

 身体の奥底が騒ぎ出している。
 今も残るセレスさんの残滓がわたしを促している。

「我慢してくれよ、姉さん」

「武志……」

 ごめん。
 もう我慢できそうにない。
 今すぐにでも……。

 ガシャーーン!!

「!?」

 何?

「まずいぞ! アンチUP異能が破壊された!」

 破壊された?
 アンチUPが?

「っ! 武志、早く解除して!」

「……」

「外に出して! ふたりが危ないの!」

「姉さんも危ないだろ!」

「わたしは大丈夫!」

「何言ってんだよ……って、ちょっと待って」

「……」

「あいつら、出て行く気か?」


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