30年待たされた異世界転移

明之 想

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第9章 推理編

六感?

<古野白楓季視点>



 確かに感じるこの気配。

「幸奈さんなの?」

『良かった! 喋れるんですね』

 腕を伸ばして、幸奈さんに触れて……いるか分かるわけもないか。

『それに動ける!』

 でも、そこに幸奈さんがいる。
 きっといる。
 そう思えるだけで、失いかけていた自分を取り戻すことが……っ!?

「幸奈さん、離れて! 敵がいるのよ!」

 そうだ。
 近くには吾妻がいる。
 幸奈さんに危険が!

『……』

「早く離れて!」

 っ!

 幸奈さんの気配が消えない。
 私の声が聞こえないの?
 それとも、私の錯覚?
 もう離れた?

『……大丈夫です』

 違う。
 幸奈さんは、まだ傍にいるわ。
 どうして?

「吾妻は?」

『もういません』

「吾妻と他の異能者は?」

『ですから、もういません』

「幸奈さん、大丈夫? 大丈夫なの?」

『……』

「怪我してない? 武志君は?」

『まさか……聞こえないんですか!?』

 もちろん、声なんて聞こえない。
 ただ、この感じは……。

 幸奈さんは落ち着いている?
 危険を感じていない?

『見えないんですか!』

「安全、なのね?」

『……』

 何が起こっているのか分からない。
 吾妻が考えていることも理解できない。
 でも、危険がないのなら現状を伝えないと。

「異能を受けた影響で、一時的に感覚を、五感を失っているの」

『えっ!?』

「……」

 幸奈さんが私の声を聞いているのか、会話が成り立っているのかどうか?
 全てが不明な中。
 今は一方的に話すしか。

「喋ることはできるのだけれど、幸奈さんの声は聞こえないし姿も見えない。触れても感じることができないから」

『そんな!』

「幸奈さんは平気なのよね? もし危険があるなら、自分のことだけ考えて」

『古野白さん……』

「私は大丈夫。異能の効力が切れれば元に戻るはずよ」

 きっと、すぐに五感は回復する。
 これ以上吾妻が異能を使わないのなら、大丈夫。

 でも、異能を使わないなんて?
 この状況で安全だなんて?

 やっぱり、信じられない。
 いったい、どういうことなの?

「……」

 まったく見当もつかないわよ。




**********************

<和見幸奈視点>



「古野白さんと武上君、敵の異能で五感を失っているみたい」

「うん。五感を全て奪う異能か」

 そんな異能、考えたこともなかった。

「どうすればいいと思う?」

「待つしかないよ。異能の効力なんて、そう長くは続かないはずだし」

「敵が戻ってきたら?」

「僕が結界で守る」

「……」

「姉さん、ごめん。他にできることがないんだ」

「武志は何も悪くないわ」

 謝らなきゃいけないのは、わたしの方。

「でも、僕に攻撃手段があれば」

「凄い結界を使えるじゃない。こうして無事でいられるのは、武志のおかげなのよ。本当に感謝してるの」

 心からそう思う。
 だから、そんな顔しないで。

「姉さん……」

「安心して、わたしも頑張るから」

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