30年待たされた異世界転移

明之 想

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第10章 位相編

覚悟

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<エリシティア視点>



 皆を退け向かった執務室には、私と腹心のウォーライル、侍従のヒュッセのみ。
 まず、このふたりに話をしておく必要がある。

「エリシティア様、謁見はいかがでしたか?」

「うむ、陛下からは労いの言葉だけであった。あとは、ずっとオズヴァルト殿下と話していたな」

「なるほど……」

「して、殿下の話は?」

「そなたらの考えている通りだ」

 兄アイスタージウスがキュベリッツに圧力をかけてきたという予想通りの内容。
 まあ、陛下ではなく殿下が非公式の場で話されたというのが意外ではあったが。

「玉璽とエリシティア様の引き渡しを求めてきたのでしょうか?」

「ふっ、玉璽だけで良いらしいぞ」

「御身については?」

「現時点では、話に出ておらぬ」

「……今の狙いは玉璽のみということで?」

「うむ。私のことなど気にもしていない。そう言いたいのであろう。特にキュベリッツ相手にはな」

 それをもって、己が王たるレザンジュ王国は盤石だと対外的に示す。
 アイスタージウスの考えそうなことだ。

 とはいえ本心は真逆だろうし、いずれ行動にも出るはず。

「実にあの男らしい」

「……」
「……」

「王太子殿下からは、暗に決断を迫られたよ」

「決断を?」

「うむ。玉璽を渡して退くか、それとも……先に進むか」

「お答えになったのですか?」

「エリシティア様?」

「今日のところは返事を保留しておいた。ただ、口にせずとも殿下は理解しておろう」

「……」

 私に退路など無いということをな。




************************

<トゥオヴィ視点>



「リヒャルド様?」

「……」

 幻術を使って試みた脱走に失敗してからというもの、リヒャルド様の口数が目に見えて少なくなってしまった。

「リヒャルド様?」

「……」

 薄暗い密室に閉じ込められ先行きも不透明な現状では、これもまた仕方ないとはいえ……。
 この状態が続くと、リヒャルド様が精神を病みかねない。

「大丈夫です。必ず出られますから」

「……」

「再度脱出を手助けするとメモも届きましたし」

 監禁されてから届き続けている走り書きのメモ。
 火事騒動の後も、見捨てられることなく届いている。

 ただし。

「……一度きりだがな」

 リヒャルド様の言う通り。
 メモが届いたのは一度きり。

 それでも、メモに書かれていた言葉に希望を繋ぐしかない。

「彼の者が必ず手を打ってくれます。それに、本国からも救出に来てくれるはずです」

 今はもう、リヒャルド様にも自分にも、そう言い聞かすだけだ。


「……すまないな、トゥオヴィ」

「何をおっしゃるんです?」

「このような目に遭ったのは全て私の責任。トゥオヴィには苦労ばかりかけてしまう」

「違います。それは違います!」

 ですから、そんな目をしないでください。
 リヒャルド様!




*************************



「功己! どうして?」

「幸奈……」

 和見家の地下室。
 ほんの数分前まで、俺がひとり位相空間への移動を模索していた部屋。

 コンクリート打ちっぱなしの壁に、テーブルとソファーと浴槽。
 他には何もない異質の空間。

 そんな室内で幸奈が。

「功己……」

 浴槽の中に横たわり、驚きの目で俺を見つめたまま。

「……」

 俺も幸奈から目を離すことができない。

「……」

 この状況、空間異能者の手によって位相空間から飛ばされたことに違いはないはず。なら、その先が地下室だというのもおかしくはない。むしろ、納得できる転移先だと考えられる。

 ただ……。

 なぜ、幸奈がここにいる?
 あっちの空間で、武志の結界に守られていたのに?
 まさか、同時に飛ばされたとでも?


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