30年待たされた異世界転移

明之 想

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第10章 位相編

異なる経験


「達人と対戦できて良かったじゃない」

「大志君は前から強者と戦いたいって言ってたからね」

「それは、そうだけどよぉ……」

 里村だけじゃない。
 今目の前にいる古野白さんも武上も、それに幸奈も。

「……」

 ある程度予想していたこととはいえ、簡単には受け入れられない。動揺が残ってしまう。

 武上、里村、古野白さんのここまでの会話や動き、それに細かい仕草まで、全てが俺の知る3人そのものなんだ。別世界の3人とは思えないんだよ。

 けど、この世界の里村は異能者であり研究所に所属している。
 15歳の時点で古野白さん武上と知り合っている。

 これらは明らかに俺の世界とは違う。
 だからもう……認めるしかないだろう。

 俺は今、過去ではなく位相世界にいることを。


「強者と戦えて勉強になったと思えばいいんだって」

「里村君の言う通りよ。だから、いつまでも落ち込まないの」

「……落ち込んでねえし」

「何言ってるの? さっきからずっと落ち込んでるで」

「楓季ちゃん!」

「あっ……そうね。武上君はこんなことで落ち込まないわよね」

「そうそう、何てったって大志君だもん」

「……」

「大志君に弱気は似合わないもんね。というか、弱気になる必要ないし」

「……そうか? ほんとにそう思うか?」

「もちろん。そもそも相手は大人なんだよ」

「だよな。あっちは年上で経験の差があって、それに、ちっと油断してたからだよな」

「うん、間違いないね」

「へへ、さすが里村。よく分かってんじゃねえか」


 俺がいるのは位相世界。
 この里村は俺の知らない異能者の里村。
 記憶消去という特殊な異能を持っている。
 しかも、そのレベルは2。
 20歳の武上や古野白さんでもレベルは1だった。
 鷹郷さんでレベル2、壬生伊織でようやくレベル3。
 15歳の里村がレベル2とは。

 非戦闘系の異能者だから?
 戦闘以上に頻繁に異能を使用するから?
 だとすれば、レベルが上がるのも頷ける、か。

 しかし……。

 15歳の里村たちを傍目にしながら思考に飲まれていると。

「功己さん」

 幸奈が話しかけてきた。
 模擬戦終了後も驚きの表情を浮かべて距離を取っていたんだが……。
 少し落ち着いたようだな。

「お疲れ様でした」

「ああ」

「凄かったです。異能者に勝つなんて、ほんともう」

「……」

「ホテルで聞いた話以上じゃないですか」

「……そうか?」

「そうですよ。とんでもないです」

 興奮したようにまくし立てる幸奈。
 どう見ても俺の知る15歳の幸奈にしか見えないが、彼女はあの幸奈じゃないんだよな。

「この目で観戦しても信じられないくらいですから」

「……」

 2つの世界の幸奈。
 外見も内面も違いがあるようには思えない。
 それなのに別人だとは……。

 ん?
 ということは。

 経験も異なっている?
 つまり、あっちの幸奈は酷い目にあっていない?


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