30年待たされた異世界転移

明之 想

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第10章 位相編

妄信?

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<古野白楓季視点>



「あいつ、戻って来ねえな」

「……」

「もう12時間だぜ」

「……有馬君にも事情があるのよ」

「この状況以上の事情なんて、あったもんじゃねえだろ」

「それは……」

 そうかもしれない。
 有馬君の性格なら、すぐにでもこの空間に戻って来そうなものだから。
 なのに、もう12時間。

「向こうで何かあったのかも?」

「何かって、何だよ?」

「そんなの分かるわけないでしょ」

「……まあな」

 有馬君の不在は私たちにとって歓迎できることじゃない。
 けど、それ以上にまずいのは皆が彼を頼りきっているという事実。
 精神的に依存しているとさえ思える現状。

「「……」」

「「……」」

 この空間に来た当初は、私たちだけで何とかするという気概に満ちていたのに、今は武上君も私も。

「こうなると、吾妻との再々戦は有馬抜きも考えねえとな」

「……」

「ちっ、厄介な戦いになりそうだぜ」

「……そうね」

「ほんとによぉ、邪狼狗戦に匹敵すんじゃねえのか」

「……」

 一度依存してしまった心を立て直すのは難しい。
 いつも能天気な武上君ですらこの調子なのだから、武志君と幸奈さんは?

 そう思い、ふたりの方に視線を向けてみると。
 幸奈さんが私に笑顔を見せ、そして。

「大丈夫です。コーキは戻って来ます!」

 強い口調で断言を?
 ずっと黙っていた幸奈さんが?

「幸奈さん?」

「必ず戻って来ます!」

 依存ゆえの盲信なの?

「心配要りませんから」

「……」

 穏やかでありながら有無を言わさぬ確信の表情。
 これは、盲信じゃない?

「どうして断言できるんだ、姉さん?」

「これまでも、そうだったから」

「これまでって何だよ? こんなこと初めてだろ?」

「そうだけど……」

「やっぱり、何か隠してるな?」

「……」

 堪えるように口をつぐむ幸奈さん。

「姉さん?」

 何かあるの?
 過去に何かあったの?
 だから、断言を?




***********************




 ギルドで情報収集した後、魔落に足を運びトトメリウス様のお言葉を拝聴し戻って来たオルドウ。夜の帳が下り始めた大通りには魔道具の光が灯り、家路を急ぐ人々の足も速い。

「あと2時間か」

 この時点でオルドウに移動後、約10時間が経過している。
 もうすぐ帰還するわけだが、余った時間は?

 急ぎの用は特に思いつかない。

 すると……。

 急に空腹感が腹を刺激し始めてきた。
 こちらに来てからオルドウ、テポレン山、魔落と駆けずり回るだけで、その間は何も口にしていないのだから当然か。

 ならば、帰還前に腹ごしらえをということで足を向けた先は夕連亭。
 食事はもちろん、確認しておきたいことが少しあるからだ。

 ウィルさん……。

 正直、黒都カーンゴルムで別れて以降は、慌ただしい日々の中で彼女のことを考える余裕もなかった。幻影と呼ばれる凄腕のヴァルターさんが傍にいるのだから問題はない。そんな思いもあって、彼女のことを気にすることなく長い時間を過ごしてしまった。

 けれど、こうしてオルドウにいる今。
 時間があるなら、ウィルさんの無事を確認しておくべきだよな。
 さすがにもう、オルドウに戻っているはずだから。


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