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第10章 位相編
位相? 2
白い靄のようなものが消えたあと。
顔前にはジルクール流道場の看板。
傍らに立つのは、道場の関係者であろう武芸者。
『こちらで、稽古をつけてもらうことは可能でしょうか?』
『うむ……。その身なり、余所者か?』
『はい。オルドウにしばらく滞在する予定なのですが、その間にジルクール流を教わりたいと思いまして』
『うちでは、オルドウ市民以外は指導していない。悪いが、他所をあたってくれ』
明らかに不審者を見るような目つきだ。
『……分かりました』
次に向かったのも、やはりジルクール流の道場。
しかし、ここでも断られてしまった。
3軒目に訪れたのは……。
見覚えがあるぞ。
ギリオンと出会ったあの道場だ。
っと、道場の手前で映像が消えて?
白転していく。
「……」
これで終わるのか?
それとも、まだ続く?
四度目の真白が晴れた先は、研究所ビルの一室ではなく……。
冴えた月明かりが道を照らしている。
ここは……夕連亭の前。
ちょうど通りに出たところだ。
こちらに歩み寄って来るのはウィルさん。
後ろにはベリルさんも。
『コーキさん……』
『……』
ウィルさんの顔には、安堵とも哀惜ともつかない色。
複雑な表情が白月に照らし出されている。
『今日のこと、忘れません』
『……はい』
『次に会う時は、あなたに……』
『……』
深夜の夕連亭前。
これは、いつのことだ?
いや、俺の体験じゃないのか?
『ウィル、あれを渡すのだろ』
『そうでした。コーキさん、受け取ってください』
ウィルさんの手の上には青い色石。
『この石は?』
『純魔石です』
『純魔石? そのような高級品、いただけません』
『私が無事だったのは、あなたのおかげです。それは間違いないことです。ですから……』
『……』
『ウィルの気持ちです。貰ってやってください』
『お願いします』
『……分かりました』
俺の過去によく似ているけれど、微妙に違う。
この場面も、これまで見た映像も。
すべてが俺の過去じゃない。
ということは……。
『コーキさん』
差し出されたウィルさんの手と握手を交わす。
続いてベリルさんとも。
『では、失礼します』
『……』
俺の辞去の言葉とともに、五度目の白化。
真白が俺を包み込んでくる。
そして……。
『この森は新人がひとりで入るには危険すぎる。どうしてもというなら、浅層だけにしておくことだ』
『浅層だけなら安全なのでしょうか?』
『安全とは言えぬが、奥よりはましだろう。深部には強力な魔物が跋扈しているからな』
今度は常夜の森の入り口。
そこで、先輩冒険者から助言を受けている。
ただ、その相手が……メルビンさん。
先日まで、エンノアで一緒に過ごしていたメルビンさんに違いない。
さらに、後ろにも見知った顔が見える。
テポレンの調査のため、メルビンさんと共に行動していた冒険者数人だ。
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