30年待たされた異世界転移

明之 想

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第10章 位相編

会談 3


「ふむ」

 鷹郷さんに視線を移す坊城老人。

「……研究所員の皆さん、少々過ぎたる行為ではないのかな?」

「いえ、こちらとしてはかなり譲歩したと思っております。これまでの和見氏の行為に対しては実質不問にしていますし、今後も行動を慎めば我々が介入することはありませんので」

「……」

「かなり穏当な処置かと」

「この先の研究所の有りように変化は?」

「我々の活動が変わることはありません。今回はあくまで未成年に対する特例措置です」

「なるほど」

「坊城さん、ご理解いただけましたか?」

「……ふむ」

 坊城老人は納得してくれたようだ。
 残る3名も変わりはない。
 ただ、幸奈の父親は。

「先生!」

「和見君、ここは受け入れなさい」

「そんな!!」

「そもそも、君の娘に異能発現の予兆はないのだ。培養液など無駄というもの」

「……」

「では、今度こそ決着ということで。和見さん、よろしいですかな?」

「……」

 もちろん、幸奈の父親は承諾などしたくないだろう。
 まったく納得していない、今もそんな表情をしているのだから。

 それでも坊城老人の威光は凄いもので、会談はそのまま終了してしまった。

 こちらとしては希望通りの決着に文句もない。
 坊城老人の登場という想定外はあったものの、拍子抜けするくらいの会談だったかな。

 ちなみに、この坊城老人。
 異能家門の主流派からは外れているらしいが、その界隈ではかなり有名らしい。
 孤高の凄腕異能者といったところか。






「鷹郷さん、皆さん、今日はありがとうございました」

「……力になれて良かったよ」

「これで少しは安心して過ごせるかな。まあ、僕は何もしてないけど」

「ほんと、私たち黙って座っていただけだもんね」

「とんでもないです。皆さんのお力がなければ、父は話も聞いてくれなかったと思いますから」

 その通り。
 俺と幸奈だけでは、相手すらしてもらえなかっただろう。
 鷹郷さんと、この2人がいてくれたからこその結果だ。

「本当に感謝しています」

「幸奈ちゃん、感謝はもういいよ。こちらも仕事なんだからさ」

「でも……」

「それより、家にいなくていいの?」

「その……居づらくて」

「まあ、そうだよね。けど、今日は戻るんでしょ?」

「……はい」

 戻りたくない気持ちは良く分かる。
 俺としても帰したくはない。
 ただ、今はそうもいかない。

「何かあったら、すぐ連絡してくれればいいからね」

「ありがとうございます」

「うん、うん、幸奈ちゃんはいい娘だなぁ」

「そんなことないです」

「いい娘だよ。その上、可愛いし」

「……」


 あの父親のことだ。
 また何かやらかす可能性も低くはない。
 とはいえ、さすがにしばらくは大人しくしているはず。

 それに、幸奈の話を親身になって聞いてくれるこの女性異能者がいれば。彼女や鷹郷さんがいれば、俺がいなくなっても何とかなる。そう考えるしかない、か。


「可愛い幸奈ちゃんは、お姉さんが守ってあげるからね」

「僕もだよ」

「えっ、あっ……ありがとうございます」

「しっかし、こんな娘にあの親爺は!」

「ほんとに!」

「……」

 若干弛緩した帰り道。
 このまま車に乗り込めば、あとは研究所に戻るだけ。

 駐車場もすぐそこ。
 だったのだが……。

「2人とも、彼女を守るんだ!」

「「えっ?」」

「すんなりとは帰れないようだぞ」

 俺たちの前に立ち塞がったのは……。



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