30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
1,037 / 1,578
第10章 位相編

矛盾

しおりを挟む
「和見の家が揺らぐことはない」

 和見家秘書の顔には自信が溢れている。

「誓約の破棄は異能全家門を敵に回すことを意味しますが、それでも問題はないと?」

「文書があれば問題かもな」

「ここにありますが?」

「ふっ、始末すればいいだけのことだろ」

「……」

「どうした?」

「和見家はなぜサインをしたのです? すぐに破棄するくらいなら、簡単に署名などしなければ良かったのでは?」

「……」

「坊城さん、ですね?」

「っ!」

「彼が承諾したから」

「うるさい!」

 図星か。
 味方として呼んだ坊城老人の存在が仇になったとは皮肉なもんだ。

 しかし、あの老人の影響力はとんでもないな。
 ほんと、公権力より坊城老人ひとりの存在を重視するなんて……。
 普通に考えて、あり得ないだぞ。

「とにかく、文書を渡したまえ!」

「……」

「そうすれば命だけは考えてやろう」

「断ったら?」

「もちろん、消えてもらう」

 仮に鷹郷さんたちの命を奪えたとしても、研究所が黙っていない。
 分かっているのか?

「自分の立場が理解できたかな? なら、文書を渡すんだ!」

「……」

 和見家が並外れた経済力を誇るのは周知の事実。
 とはいえ、こんな凶行をもみ消す力まで持っているというのか?
 大見得を切っているだけではなく?

「早くしろ!」

「……渡す気はありませんね」

「何だと!」

「文書は持ち帰ります」

「っ! 後悔するぞ!」

「後悔するのは、あなたたちの方ですよ」

「……その人を見下したような目。自分たちは選ばれた超越者だと驕っている目だな」

「……」

「力とは異能だけではない。それをおまえたち異能者に教えてやる!」

「あなたも異能者を従えているようですが?」

「黙れ!」

 この秘書、コンプレックスと矛盾だらけじゃないか。
 何とも面倒なやつだ。

「和見家が持つ力を侮った己を悔やむがいい」

 で、やっぱり銃を使うと。

「撃てぇ!」

 もちろん、異能者にとっても銃は厄介だろう。
 が、今の会話で稼いだ時間は充分なもの。
 会話中、鷹郷さんの目配せを受け取っていた2人の部下も準備はできているはず。

「サンドウォール!」

「アイスウォール!」

 ほら。
 背後から異能発動の声だ。

 と、ほぼ同時に。

 ダンッ!
 ダンッ!
 ダンッ!
 ダンッ!
 ダンッ!

 銃声が5つ。

「……」

 硝煙が消えたあと、俺と鷹郷さんの目の前に見えるのは2つの壁。
 放たれた銃弾は、その土壁と氷壁に埋もれている。
 当然、こちらには届いていない。


しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。〜少年アレクの倫理で殴る学園ファンタジー〜

鮒捌ケコラ
ファンタジー
入学式から3週間目にして『退学」を言い渡された。 (早くない?RTAじゃないんだからさ。) 自分で言うのもアレだけど、入学してからは結構真面目に通ってた。 けど、どうやら教員の不況を買ってしまったらしい。 幸か不幸か、退学まで1週間の執行猶予が与えられた。 けど、今更どう足掻いても挽回する事は不可能だろうし、 そもそも挽回する気も起こらない。 ここまでの学園生活を振り返っても 『この学園に執着出来る程の魅力』 というものが思い当たらないからだ。 寧ろ散々な事ばかりだったな、今日まで。 それに、これ以上無理に通い続けて 貴族とのしがらみシミッシミの薬師になるより 故郷に帰って自由気ままな森番に復職した方が ずっと実りある人生になるだろう。 私を送り出した公爵様も領主様も、 アイツだってきっとわかってくれる筈だ。 よし。決まりだな。 それじゃあ、退学するまでは休まず毎日通い続けるとして…… 大人しくする理由も無くなったし、 これからは自由気ままに、我儘に、好き勝手に過ごす事にしよう。 せっかくだし、教員達からのヘイトをカンストさせるのも面白そうだ。 てな訳で……… 薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。 …そう息巻いて迎えた執行猶予満了日、 掲示板に張り出された正式な退学勧告文を 確認しに行ったんだけど…… どういう事なの?これ。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

成り上がりたいのなら勝手にどうぞ。僕は『テリトリー』で使い魔と楽しく過ごす事にします

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 スキルを持っている事が国民として認められるレビューブ皇国では、スキルを持って生まれた者を『シルバー』と呼び、スキルを買って得た者を『ブラック』と呼ぶ。魔獣が蔓延るこの大陸では、シルバーで編成されたスキル隊と、シルバーがマスターとなってギルドを形成する冒険者が、魔獣を駆除していた。  そこには、成り上がる事を目指す者も。  そんな中、ラシルは使い魔と楽しく暮らす事を選ぶ事にするのだが――。

【収納】スキルでダンジョン無双 ~地味スキルと馬鹿にされた窓際サラリーマン、実はアイテム無限収納&即時出し入れ可能で最強探索者になる~

夏見ナイ
ファンタジー
佐藤健太、32歳。会社ではリストラ寸前の窓際サラリーマン。彼は人生逆転を賭け『探索者』になるも、与えられたのは戦闘に役立たない地味スキル【無限収納】だった。 「倉庫番がお似合いだ」と馬鹿にされ、初ダンジョンでは荷物持ちとして追放される始末。 だが彼は気づいてしまう。このスキルが、思考一つでアイテムや武器を無限に取り出し、敵の魔法すら『収納』できる規格外のチート能力であることに! サラリーマン時代の知恵と誰も思いつかない応用力で、地味スキルは最強スキルへと変貌する。訳ありの美少女剣士や仲間と共に、不遇だった男の痛快な成り上がり無双が今、始まる!

処理中です...