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第10章 位相編
異能の力
逃走を続ける吾妻の口から洩れる詠唱。
ネイティブのような滑らかな発音に、なぜか奇妙な不快感が押し寄せてくる。
肌が粟立ってしまう。
「The sense dominates Life……」
吾妻の異能は、一時的とはいえ五感を全て喪失させるというもの。
鑑定の解説を見ただけでも、その驚異の性能は容易に想像がつくが、実際に異能を受けた古野白さんたちの体験談はさらにとんでもないものだった。
「The sennse presides over Death……」
ただ……。
もし俺が五感を失ったら、どうなる?
魔力で対応できるのか?
こればかりは分からない。
身をもって経験しないと理解できるものじゃない。
「The sennse creates beyond infinite time……」
だからといって、こんな異能。
受けるつもりはさらさらない。
「有馬ぁ、気をつけろ!」
「ああ」
分かってるさ。
五感喪失なんて関係ない。
今回も前回同様、発動前に倒してやる。
「No exception!」
しかし、この吾妻という男。
端麗な容姿からは想像できないほどの身体能力だな。
異能だけでも脅威なのに、体術も足も普通じゃない。
逃げっぷりも、相当なものがある。
「……」
それでもだ、魔力で強化した俺の足からは逃げられないぞ。
ほら、すぐそこに。
「Known to every……っ!」
もう腕が届く。
右拳が。
「吾妻さん、こっちに!」
「!?」
右拳が顔面に届く寸前。
突然、吾妻の背後に現れた空間異能者がやつの腕を取り、そのまま……。
消えてしまった!
「……」
言うまでもなく、俺の右拳は空を斬りさくだけ。
「消えたの?」
「ああ、消えちまったな」
「また、元の世界に戻ったんでしょうか?」
「それは……」
逃げ帰った?
そうなのか?
「「「「……」」」」
違う!
気配だ。
再び気配が、そこに!
「っ! 後ろ!!」
「了解」
空間異能者が何をしたのかは不明。
鑑定でも、詳しいことは分からない。
ただ、こいつは瞬間移動みたいなもんだろう。
吾妻と空間異能者が20メートル後方に現れたのだから。
「Known to no……」
「ちっ、間に合わねえ! 戻って来い、有馬ぁ!」
いや、まだ何とかなる。
最高速で駆ければ間に合う。
魔力を纏った脚に力を入れ、全力で地面を蹴りつけ、急加速。
一気に距離を詰め。
そして。
「I am the flesh of senses……」
あと数歩。
「功己!」
大丈夫だ。
間に合う。
発動前に届く。
よし、いけるぞ。
これで、どうだぁ。
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