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第10章 位相編
内と外
<古野白楓季視点>
「……five senses!!」
「功己ぃ!」
「有馬君!」
吾妻の詠唱完了に、幸奈さんと私が叫んでしまう。
「……」
有馬君は目と鼻の先。
けど、間に合わなかった。
吾妻の異能をまともに受けてしまった。
あと少しだったのに……。
「ちっ、何してんだ」
渋い表情で吐き捨てる武上君。
「作戦通り戻りゃあ、問題なかったのによぉ」
その気持ち、よく分かる。
後退をもう少し早く始めていれば異能を受けることなどなかったのだから。
ただ……。
「でも、あそこでバランスを崩さなければ……」
私の考えも幸奈さんのそれと同じ。
後退の判断が遅くとも、有馬君なら間に合わせていただろう。
想定外の躓きさえなければ、今はもう結界内にいたはず。
「で、古野白は平気か?」
「えっ?」
「五感は問題ねえのか?」
そうだった。
結界に守られていたとはいえ、吾妻の異能が有効範囲内で発動したのだから、五感に何らかの異常をきたしても不思議じゃない。
もちろん、五感を失っても結界の中にいれば安全に回復できるという計算のもとで、私たちはここに隠れたのだけれど。
「どうなんだ?」
「……少し目がかすんで、手足の感覚もちょっとおかしいわね」
ただし、言われて初めて気付く程度のもの。
「でも、これなら問題なく動けるわ」
「そうか、オレもだ」
武上君も同じ。
だったら。
「幸奈さん、武志君は?」
「わたしは平気です」
「変な感じはするけど、僕も大丈夫です」
4人ともに大きな問題はなし。
つまり、武志君の結界が吾妻の異能を防いだってことだ。
「武志の結界は凄えな」
「でも、兄さんが……」
「「「……」」」
「結界の効果範囲がもう少し広ければ、守ることもできたのに」
「結界領域のことはしょうがねえだろ」
「……」
もちろん、皆が理解している。
有馬君を見捨ててしまったことを。
けど、だからといって、どうしようもなかったから。
こうするしかなかったから。
「で、吾妻の異能を防いだことだし、出るか?」
結界を解除して外に出る?
「一度解除すると、すぐには結界を張れませんよ」
「ああ」
武志君の結界再構築にはそれなりの時間が必要。だから、解除後に間を置かず吾妻が異能を発動した場合、五感喪失を身に受けてしまう。
武上君と私だけなら、距離を取って逃げ切れる可能性もあるけれど、ここには武志君、そして幸奈さんがいるのよ。そんな危険を冒すなんて。
「駄目よ」
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