1,081 / 1,640
第10章 位相編
疑心暗鬼
「身柄、確かに引き受けました」
「研究所への連行、お願いするわね。私と武上君は少し遅れて研究所に戻るつもりだから。鷹郷さんには、よろしく伝えておいて」
「了解です」
吾妻と空間異能者を連れて和見の屋敷から出て行く能力開発研究所職員。
彼らを見送る古野白さんと武上の顔には、安堵とともに疲労の色が見える。
傍らの幸奈と武志も同様だ。
「幸奈さん、武志君、今後のことは任せてちょうだい。和見家のこと、あなたたちのこと、研究所が責任をもって対応するから。もちろん、あなたたちの父親についてもね」
「ありがとうございます」
「おう。こんなこと仕出かした相手にゃ、研究所も強く出るからよ。何も問題ねえぜ」
「はい」
あの異空間で吾妻と空間異能者を倒した後。
こちらに戻るのに少し手間取るかとも思ったのだが、案に相違してあっさりと帰還することができた。
しかし、異能者征圧、異形の気配滅却に続き、こうも簡単に事が進むと……。
「それで、あの人たちは大丈夫なんでしょうか?」
「異能抑制具と縄で拘束してんだ。心配ねえよ」
「研究所職員もプロなのだから安心して」
「そう、ですね」
幸奈たちを助けることができたという事実には満足している。
もちろん、安堵もしている。
ただ、これで全てが終わったと考えていいのか?
邪狼狗の気配が消えたってことは、奴を倒したということなのか?
いや、簡単にそうは思えない。
心から安心できない。
疑心暗鬼にとらわれてしまう。
「こっからはオレたちが上手くやるからよ。ふたりは休んでくれや」
「私たちは一度研究所に戻るけど、幸奈さんと武志君は、今日はゆっくり休んで。それで、明日また話しましょ」
頭を悩ましてしまう。
が、だからといって、今の俺に分かることでもない。
やはり、ここは研究所に行って……。
「はい。あの、今回は本当にありがとうございました」
「ありがとうございました」
「いいのよ。これは私たちの仕事なんだから」
「でも……」
「とにかく、今日は休んで。また明日、ね」
「……はい」
疲労を笑みで隠した古野白さんと武上が和見家の玄関へと足を向ける。
俺も。
「有馬君、悪いわね。疲れてるでしょうに、研究所にまで同行してもらって」
「疲れているのはお互い様ですよ」
「私たちは仕事だから」
「仕事じゃなくても報告は必要でしょ。だったら、さっさと済ませた方がいいですしね」
「おう、面倒なことは早く片付けた方がいいってな」
「それはまあ、そうだけど……」
「ただ、研究所に行く前に幸奈と話がしたいので、少し外で待っててもらえませんか?」
「……ええ、分かったわ」
「研究所への連行、お願いするわね。私と武上君は少し遅れて研究所に戻るつもりだから。鷹郷さんには、よろしく伝えておいて」
「了解です」
吾妻と空間異能者を連れて和見の屋敷から出て行く能力開発研究所職員。
彼らを見送る古野白さんと武上の顔には、安堵とともに疲労の色が見える。
傍らの幸奈と武志も同様だ。
「幸奈さん、武志君、今後のことは任せてちょうだい。和見家のこと、あなたたちのこと、研究所が責任をもって対応するから。もちろん、あなたたちの父親についてもね」
「ありがとうございます」
「おう。こんなこと仕出かした相手にゃ、研究所も強く出るからよ。何も問題ねえぜ」
「はい」
あの異空間で吾妻と空間異能者を倒した後。
こちらに戻るのに少し手間取るかとも思ったのだが、案に相違してあっさりと帰還することができた。
しかし、異能者征圧、異形の気配滅却に続き、こうも簡単に事が進むと……。
「それで、あの人たちは大丈夫なんでしょうか?」
「異能抑制具と縄で拘束してんだ。心配ねえよ」
「研究所職員もプロなのだから安心して」
「そう、ですね」
幸奈たちを助けることができたという事実には満足している。
もちろん、安堵もしている。
ただ、これで全てが終わったと考えていいのか?
邪狼狗の気配が消えたってことは、奴を倒したということなのか?
いや、簡単にそうは思えない。
心から安心できない。
疑心暗鬼にとらわれてしまう。
「こっからはオレたちが上手くやるからよ。ふたりは休んでくれや」
「私たちは一度研究所に戻るけど、幸奈さんと武志君は、今日はゆっくり休んで。それで、明日また話しましょ」
頭を悩ましてしまう。
が、だからといって、今の俺に分かることでもない。
やはり、ここは研究所に行って……。
「はい。あの、今回は本当にありがとうございました」
「ありがとうございました」
「いいのよ。これは私たちの仕事なんだから」
「でも……」
「とにかく、今日は休んで。また明日、ね」
「……はい」
疲労を笑みで隠した古野白さんと武上が和見家の玄関へと足を向ける。
俺も。
「有馬君、悪いわね。疲れてるでしょうに、研究所にまで同行してもらって」
「疲れているのはお互い様ですよ」
「私たちは仕事だから」
「仕事じゃなくても報告は必要でしょ。だったら、さっさと済ませた方がいいですしね」
「おう、面倒なことは早く片付けた方がいいってな」
「それはまあ、そうだけど……」
「ただ、研究所に行く前に幸奈と話がしたいので、少し外で待っててもらえませんか?」
「……ええ、分かったわ」
あなたにおすすめの小説
ひだまりのFランク冒険者
みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。
そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。
そんな中
冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。
その名は、リルド。
彼は、特に何もない感じに毎日
「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。
この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。
ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!
TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。
その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。
競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。
俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。
その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。
意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。
相変わらずの豪華客船の中だった。
しかし、そこは地球では無かった。
魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。
船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。
ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ……
果たして、地球と東の運命はどうなるの?
社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル
14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった
とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり
奥さんも少女もいなくなっていた
若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました
いや~自炊をしていてよかったです