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第10章 位相編
現状
<ヴァルター視点>
「で、どうすんだ?」
「どうするとは?」
「このままずっと刺客の相手をすんのかってこった?」
黒都カーンゴルムでは思わぬトラブルに巻き込まれてしまったが、幸いなことに黒都脱出からキュベルリア帰還までは大過なく進めることができた。想像以上にスムーズに事を運ぶことができた。ただ、そこからがよろしくない。
「いつまでもこんなことしてても、意味ねえだろ」
「……」
当初の計画では、レザンジュの正当後継者の証である玉璽をエリシティア様に引き渡し、その後は争いが落ち着くまで距離を取るつもりだったのに、今もこうして白都に留まっている始末。
「埒が明かねえぞ」
「……やむを得ない状況だ。しばらくは我慢するしかない」
「けっ! 今日も明日も明後日も、その後もかよ」
「……」
先代レザンジュ王の次女であるウィル様。
今は亡き父王から娘であることを直接認められたとはいえ、それを知る者はほんの僅か。ならば、我らは後継者争いから離れ傍観すればいい。国璽をエリシティア様に手渡し白都を去れば問題などない。
そんな目論見が狂ったのは、エリシティア様にお嬢の素性が知られていたから。
おそらくは、侍従ヒュッセの仕業。
本人は否定しているが、黒都脱出時の約束を破りエリシティア様に事を伝えたのだろう。
「このまま守ってばかりじゃ、どうしようもねえ」
エリシティア様が事実を知る現状。
簒奪者アイスタージウスも実は知っているのではないのか?
もし秘密が漏れていたら?
やつが全てを知っていたら?
お嬢の命を狙ってくる?
分からない。
やつがどう動くか読めない。
ただ、相手は穏健とは程遠いアイスタージウス。
簒奪者ながらほぼ実権を握っている現状、本気を出せば魔の手をどこまでも伸ばせるはず。
こうなるともう、迂闊には動けない。
エリシティア様の屋敷に滞在するという案を簡単に断ることなどできない。
結局。
お嬢はエリシティア様のもとに留まり、オレはギリオンや他の騎士たちとともに、昼夜問わず屋敷の警備にあたることになってしまった。
「ヴァルター、おい?」
「ん、ああ……問題ない。それで、何の話だ?」
「おめえ、聞いてなかったのかよ」
「……」
「今後も同じように警備を続けんのかって話だろうが」
「……そうだったな」
「んで、おめえはどう思う?」
「続けるしかないだろ」
襲撃が絶えない現状、警備の放棄は考えられない。
「だから、続けるだけじゃ意味ねえんだって」
「……」
「こっちから仕掛けてやろうぜ」
攻撃に転じる、か。
確かに一考の余地はある。
「偽王の高慢ちきな鼻をへし折ってやろうぜ」
「簡単ではないぞ」
「だから、面白れえんじゃねえか」
ギリオンらしいな。
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