30年待たされた異世界転移

明之 想

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第11章 陰謀編

大神殿 2

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 主神エストを最高神として崇めるエスト神殿。
 トトメリウス様の過去の言葉からも、若干あやしい宗教組織だというのは分かっていた。それでも、神の力を俗世に顕現させる力を持つ神官が多く存在するのも事実。

 その事実を重視したからこそ、こうしてキュベルリア最初の訪問場所と考えたんだ。

「……」

 実際のところ、単に神の奇跡、神力を借りたいのであれば迂遠なことなどせず、神様に直接頼めばいい。神様と接点のない者ならいざ知らず、トトメリウス様と話す術を持つ俺ならそれも可能なのだから。
 トリプルヘッドによる黒炎の火傷を癒し、セレス様の死病をも癒したトトメリウス様ならば、視力回復も難しいことではないはずだから。

 ただ……。

 今回は俺やセレス様のケースとは違う。このような状況でトトメリウス様を頼って良いものか? いや、とてもそうは思えない。
 
 加護もなく、面識もない、トトメリウス様にとっては単なる小さき者でしかないシアのために神力を求めるなどという不敬、とてもじゃないが俺が口にできることじゃないんだ。

 だというのに。
 全てを理解した上でなお、一言ならばと助言を与えてくださったトトメリウス様。
 本当にどう感謝すればいいのか……。

 だから今は。
 トトメリウス様の言葉を胸に刻み、考えつく可能性全てを試すのみ。

 まずは、最も即効性が見込める手段。あやしくても、金にまみれていても、俗物でも構わない。確実に視力を取り戻す方策さえ持っていれば、それで。


「このような喜捨をいただきながら申し訳ないのですが、不可能なことは不可能なのですよ」

「そうですか……。ところで副神殿長様、実はある噂を耳にしたのですが」

「いかような噂で?」

「エスト大神殿には、秘された神技が存在すると。視力回復どころではない奇跡の御業だと」

 四肢の欠損すら完全に癒す奇跡。
 それが大神殿には存在すると耳にしている。

「どこで、そんな話を?」

 この反応。
 やはり。

「実在するのですね?」

「……」

 にこやかな表情が一変、難しそうな顔で口をつぐむ副神殿長。

「そのお力、お借りできないでしょうか? 追加の喜捨も用意いたしますので」

「お心掛けは尊いものですが……」

 拒絶の言葉をこれ以上聞くつもりはない。

「もちろん、副神殿長様にも」

 言葉を切り、差し出したのは日本で言うところの菓子折り。
 ただし、重量が違う。

「……これは?」

「ご確認ください」

「……」

 無言で箱の中を見つめる顔に、まだ笑みは戻ってこない。
 ならば、追加で1箱を。

「……」

 口元が緩んできたぞ。
 もう一押しか?

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