30年待たされた異世界転移

明之 想

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第11章 陰謀編

証人 2

「筋肉くんたぁ、誰のことだ!」

「答えるまでもないんじゃねえの」

 ジンク、おまえこそ油を注いでるじゃないか。

「てっめえ!」

「ん?」

 せっかく収まりかけていたというのにまた、と思ったところで。

「おほん!」

 レイリュークさんの咳払い。

「その茶番、いつまで付き合えばいいのかな?」

「……」

「……」

 彼の言葉にギリオンとジンクの意識がそちらに向かう。

「まだ続けるというなら、他所でやってくれ。ここじゃあ、迷惑だ」

 確かに……。

 道場の中からは騒ぎを聞きつけた門弟たちが姿を現し始めている。
 このまま続ければ、夕闇のこの時間でも人が溢れてしまいそうだ。

「我らは道場に戻るとしよう」

 とはいえ、それはないだろ。

「レイリュークさん、待ってください」

「その必要を感じないのだが?」

「道場裏で騒いだことは謝罪します。ですが、今問題にしているのはそこじゃないでしょ」

「……」

「ジンクさんが、見てたんですよ。そちらの剣士がギリオンを背後から斬りつけるところを。これで証拠、証人が揃いましたよね」

「……ジンクとやら、君は現場を見たのか?」

「まあ、そうだなぁ」

「ということです。ですので、そちらの剣士を引き渡してください」

 本来なら再び彼の跡をつけるつもりだったが、こうなったからには仕方ない。
 直接、尋問するとしよう。

「それは、できないな」

「何だと、証拠は揃ってっだろ。さっさと渡しやがれ」

「証拠? 君たちの友人が見たものを証拠というのかな?」

「オレはこいつの友じゃねえ」

「だが、そちらのふたりは親しいようだ」

「そいつぁ……」

「レイリュークさん、確かに私たちは顔見知りです。ですが、それで証拠能力がなくなるとは思えません」

 この世界の法がどんなものかは知らないが、ここは断言させてもらう。

「それでも証拠不足だというなら、後日あらためて証人を連れてきますよ」

「……」

「ですので、彼の身柄を引き渡してください」

「ふむ……。では、後日、その証人とやらを連れてきたまえ。その証言次第で、引き渡しも考えよう」

「何言ってやがる!」

「ギリオン、いい加減うるさいぞ。おまえは、ここで飯を食ったこともあるんだ。少しは弁えろ」

「それは、労働の対価だ。それに、おめえに言われる筋合いはねえ」

「これだから、おまえは……」

「とにかく、渡しやがれ!」

「まったく、話にならんな」

「何だと!」

「レイリュークさん」

「今日はここまでだ。まだ話があるなら、後日、正当な証人を連れて来ればいい。ああ、君たちではなく、官憲の手でな」

「……」

「では、我らは屋敷に戻るとしよう。もちろん、君たちとはここでお別れだ」

 その剣士は裏口から逃げるつもりだったんだろ。
 都合が悪くなったから屋敷に戻ると?

「まだ、話は終わってねえぞ」

「ギリオン、おまえとは話にならない。君、君なら話も通じるようだから、ひとつ忠告しておこう」

 何だ?

「今後屋敷に入ってくるようなら不法侵入とみなすことになる。君なら理解できるな?」

「……」


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