30年待たされた異世界転移

明之 想

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第11章 陰謀編

石牢 5


「夕食だ」

 投げ捨てるような言葉とともに石牢の下部に作られた小窓から差し入れられたトレイ。その上に載っていたのは、1人前にも満たない少量の水とパン。

「何だこりゃ! こんなもんで足りるわけねえだろ」

「……」

「てめぇ、1日放置してこの量たぁ、どういう了見だ!」

 ギリオンが怒鳴るのも当然。
 昨日石牢に閉じ込められて以降、食事も与えられず22時間石牢に放置。衛兵たちは事情聴取をするどころか様子を見に来ることもなく、やっと下りてきたかと思ったら少量の食糧を手渡すだけなのだから。

「っつうか、こっから出しやがれ!」

「……」

「顔に1発入れたくれえで、いつまでも閉じ込めるってなぁ、あり得ねえだろうが」

「……」

「てめえら、何考えてやがる?」

「……」

「黙ってんじゃねえぞ!」

 答える気はない、か。

「……」

 昨日から今日にかけての状況。
 この衛兵の態度。

 もう間違いない。
 普通の勾留じゃないな。
 裏で何らかの思惑が働いている。

「てめえ、口はついてねえのか!」

「……」

「ちっ! 喋らねえんなら、黙ってこっから出せや!」

 石牢の前には、ずっと無表情のままの衛兵。

「取り調べでも何でも受けてやっからよ」

「……元気だな」

 おっ、反応したぞ。
 と思ったら、もう階上に戻ろうとしている。

「おい、待て!」

「……」

 小声で少し呟いたのみ。
 指示も何もなく、ただそれだけで。

「待ちやがれ!」

 ギリオンの叫びに振り返ることもなく、去ってしまった。

「あんの野郎!」

「……」

「ふざけんじゃねえ!」

 ほんと、ふざけた対応だ。

「ちっ! まだこのままかよ!」

 ああ。
 しばらく放置するつもりかもしれないな。



「コーキよぉ」

 衛兵が去った廊下をしばし凝視していたギリオンが、こちらに視線を向けてくる。

「時間がもったいねえ」

「そうだな」

「オレはやることがあんだ!」

 だから、それは俺も同じなんだよ。
 限られた王都滞在時間の中で、すべきことが幾つも残ってるんだからな。

「こうなりゃ、魔法なしでも脱出するしかねえぞ」

「……」

「で、脱出法は?」

「まだ、だな」

 残念ながら、確たる手段は見つかっていない。
 とはいえ、少しばかり光明も見えてきた。このまま進めれば、今夜中には何とかなるかもしれない。ただ、ここに来て拭いきれない懸念も生まれている。

 いかにも怪しいこの状況下で、本当に脱獄していいものなのか?
 罪を重ねるのは、敵の思惑通りじゃないのか?

「……」

 分からない。


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