30年待たされた異世界転移

明之 想

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第11章 陰謀編

迷路行 1

 右に曲がっても、左に曲がっても、先に続くのは狭い通路ばかり。
 半刻以上歩いても、状況に変化はない。
 迷路のような空間をただ彷徨うだけ。
 人に話を聞こうにも、人の気配自体が消えてしまった。

 一刻も早くギリオンのもとに駆けつけたいのに。

「……困ったな」

 おそらく、このまま闇雲に動いても結果は同じだろう。
 なら、歩き回る以外に手があるかと言うと、妙案があるわけでもない。

 とはいえだ。
 脱出不可能とは思えないのもまた事実。

「……」

 確かに厄介な場所ではある。が、魔落のような底知れなさは感じないし、神秘を前にした無力感のようなものも皆無。つまり、ここは超越的存在による創造物じゃないってことだろう。

 魔道具にしろ、宝具にしろ、人の手によって造られた迷路なら何とかなるはず。
 そんな確信を持ててしまう。
 なのに、今の体たらくは……。
 
 だったら、どうする?
 どう動く?

「……」

 とりあえず、試してみるか?
 そうだな。
 正解じゃなくてもいいから、思いつくことを試すべきだな。

 では、まずは壁の破壊からだ。
 目の前の壁を破壊して、ひたすら前進してやろう。
 上手くいけば、迷路を破棄しつくして脱出できるかもしれない。

 そうと決まれば、さっそく。
 鞘から抜いた剣の表面に魔力を纏わせ、内部にも魔力を込め。
 強化完了。

「始めるぞ」

 上段に構えた剣を、躊躇なく壁に叩きつけてやる。

 ガシッ!

 軽い?

 想像以上に軽い感触だが、剣は問題なく壁を通過している。
 縦に大きく亀裂が走っている。
 成功だ。

 ならば、続けて横に一閃。
 さらに斜めにも一閃。

 すると、目の前の壁が崩壊し……。
 抜け穴が完成した。

 よーし、これで前へ進める。
 一歩前進だ。

 ただし、油断していい場面じゃない。
 慎重に気配を探りながら穴をくぐり抜け、先の空間へと足を踏み入れる。
 すると……。

 そこに広がっていたのは予想通りの光景。
 狭い通路が左右に伸びている空間だった。

「……」

 ああ、分かってたさ。
 だからな、何度でもやってやるよ。

 再び剣を壁に。

 ガシッ!




 ガシッ、ガシッ!
 ドガン!

 これで7度目の破壊に成功。
 とはいえ、壁穴の先に見えるのはまたしても迷宮通路。
 特に代わり映えしない眺めばかりだ。

「はは」

 ついつい乾いた笑いが漏れてしまう。

「……」

 それでも、7回も壁を越えてきたんだ。収穫がないわけじゃない。
 ここまでの過程で分かったこともある。

 まずは、壁の自動修復。
 破壊した壁を通って戻ってみると、既に3つ目の壁まで元通りに復元されていた。
 どうやら時間経過に伴い壁が修復されるようだ。

 次に、消えていた気配の復活。
 さっきまでは全く感じられなかった気配を、今は数メートル前方に知覚できる。つまり、この先には間違いなく人が存在している。

 そして、この2つから推測できるのは……。

 ここは通常空間ではないが、完全に隔絶されているわけでもないってこと。すぐそこには通常空間が広がっているってことだ。


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