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第11章 陰謀編
既視感
「どうしました? 座らないのですか?」
「皆様とは身分が違いますもので」
「身分?」
「……はい」
「ふふ、バシモス殿は正式な爵位はお持ちではないですよ。それに、私もリューヌセルクの次女に過ぎません」
バシモスという男がどうであれ、そっちは公爵家の令嬢だ。
次女だろうが関係ない。
その上、王太子の筆頭秘書官なんだから。
「ですからね、どうぞ」
「……」
「気楽にお座りください」
微笑みを浮かべながらの穏やかな言葉。
にもかかわらず、この凄みみたいなものは何だろう?
……思わず腰掛けてしまった。
3人が座した長椅子に沈黙が流れていく。
「……」
「……」
「……」
俺の隣には不審な顔を隠さないバシモス。
正面には公爵家令嬢。
感情が見えない笑みがはりついている。
「皆さん、どうしました?」
さっきと変わらぬ穏やかな声音だが、何とも言えない空気を放っている。
リューヌセルク公爵家次女サヴィアリーナ。
会ったことも、聞いたこともない。
若く見目麗しい公爵令嬢。
そんな彼女が、この圧力。
向かい合うと、今まで以上に感じてしまう。
その上、奇妙な既視感のようなものまで?
いったい、どうなってるんだ?
「少々空気が重いですね?」
「ああ、すみません。少し考え事をしていまして」
バシモスが令嬢に謝りながら、こちらを睨みつけてくる。
「そうでしたか。で、何を考えていたのです?」
「……彼がオルセーに何の用かと」
「確かに、それは気になりますね」
バシモスに加えて、こちらに向けられる公爵令嬢の視線。
やはり普通じゃない。
「聞いてもよろしいですか?」
「……」
「オルセーには、何用だ?」
ここで黙秘はできないだろう。
とはいえ、どう答えるべき?
「話せぬのか? それとも、用など存在しない?」
「いえ……冒険者についてです」
「冒険者?」
「はい、ある冒険者について話をすることになっております」
「オルセーが冒険者を?」
嘘じゃない。
冒険者ギリオンについてだ。
「今回の件ではありませんか?」
「レイリュークの件に冒険者が絡んでいるとお考えで?」
「ええ、可能性はありますでしょ」
「……」
おそらく今は、俺たちを謀ったレイリュークが隣国の間諜として疑われている状況。そんなあいつを探っていたのがオルセー。
となれば、何かあるよな。
ん?
この気配は?
オルセーが意識を取り戻そうとしている?
「……」
やつは奥のソファーの後ろに転がったまま。
ロープで縛り、猿ぐつわを噛ませてはいるが、音を出せないわけじゃない。
困ったぞ。
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