30年待たされた異世界転移

明之 想

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第11章 陰謀編

困惑


「オルセー殿が倒れていたんです」

「何だと?」

「ですから、オルセー殿がここに倒れて」

「さっきはオルセーを待っていると話していたではないか! それに、この拘束は何だ?」

「分かりません。私も今気づいたところですから」

「我らが入室した時には奥に隠れていただろうが? 知らなかったとは言わせないぞ」

「いえ、気づきませんでした」

 口にするのも恥ずかしいくらい無茶苦茶な話ではある。
 けど、ここは言い切るしかない。

「ふざけるな」

「そんなつもりはありません。それより、こちらに来て見てください」

「……何をだ?」

「オルセー殿の様子ですよ。私が見たところ命に別状はないと思いますけど」

「……」

「私を疑う気持ちは理解できます。ですが、彼の意識が戻れば全ては明らかになりますので、まずは介抱を手伝ってください」

「見苦しいことを言いおって」

 そう口にしながらも、オルセーに近づくバシモス。

「こちらです」

 不信感に溢れた表情をこちらに向け、オルセーの傍らに膝をついた。

「……」

「呼吸と脈を確認ください」

 疑っているのにこちらの誘導通り動いてくれるバシモスに対しては、若干気が引けるものがある。が、今は躊躇している場合じゃない。

 おまえにも眠ってもらうぞ。
 至近距離から雷撃を、発動。

「ぐっ! きさ、ま……」

 この距離で避けることなどできるわけもない。
 バシモスは2、3度痙攣を繰り返し、意識を手放してしまった。

「……」

 現状、床の上にはオルセーとバシモスが並ぶように横たわっている。
 一方で、公爵令嬢は長椅子に座ったまま。
 今のやり取りを見ても平然としたもの、まったく動じていない。

 俺とバシモスの会話は聞こえていただろうに?
 どうして平然としていられる?

 確かに、隠し持った気配は並じゃない。
 それでも、貴族家の若い令嬢なんだろ。
 ほんと、何者なんだ?


「終わりましたか?」

 戸惑いつつ向き直った俺にかける言葉も穏やかなもの。

「……ええ」

「お疲れ様です」

「……」

「どうぞ、こちらにお戻りください」

 そう言われると足が止まってしまう。

「驚いています?」

「……当然でしょう」

 彼女の態度を見て驚かないわけがない。

「ふふ」

「……」

 危機感など少しも覚えていないこの様子。
 何らかの自信があるのか?

「さてと、どうしましょう?」

 公爵令嬢である自身には危険など及ばないと考えている?

「バシモスさんを倒せるような方と2人きりですから」

「……」

「困りましたね」

 そう言って笑みを深めていく。
 言葉とは逆。まったく困っているようには見えない。 
 むしろ、困惑しているのは俺の方だ。

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