30年待たされた異世界転移

明之 想

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第11章 陰謀編

変貌


「今度こそ分かりました?」

 短剣を俺の目の前で止めたサヴィアリーナ嬢の剣気が薄れていく。
 戦意も消えて……。

 いや、違うな。
 本気で害する意志など最初からなかったんだろう。

「まだ分からないんですか?」

「……何のことです?」

「はぁぁ」

 俺の返答を受け、眼を瞑る公爵令嬢。
 呆れたような仕草で短剣も収めてしまった。

「困った人ですよ」

「……」

「アリマさんは」

 なっ?
 どうして俺の名前を知ってる?
 しかも、コーキではなくアリマの方を?

「ねえ?」

 やはり、どこかで会っているのか?
 王国中枢にいる大貴族令嬢と?

 いや、しかし……。

 こちらの世界で俺がアリマの名を使ったのは僅か数回だけ。その名を知る者は知人の中にもほとんどいない。なのに、俺をアリマとして認識しているなんて。

「……」

 アリマの名を知る公爵家次女。
 さらには、さっきの気配、短剣の扱い。この事態まで読んでいたという。
 どこをどう切り取っても、異常なことばかりだ。

「どうしました? とっても難しい顔をされてますけど?」

「……公爵令嬢であるあなたが、どうしてその名を知っているんです?」

「ほんと、何も思い出せないのですね」

 眉をひそめ、頬を歪めながら、どこからか取り出したブレスレットを触っているサヴィアリーナ公爵令嬢。

「あれだけのことがあったのに寂しい限りです」
 
「……あれだけのこと?」

 彼女と、いつどこで何があったというのか?

「……」

 駄目だ。
 どうやっても、思い出せない。
 サヴィアリーナ嬢のような女性に会った記憶なんて、まったく……。

「これ以上は無駄、か」

 えっ?
 令嬢の声音が変わった?

「今は時間もないしな。答え合わせをしてやろう」

 冷たく言い放って、ブレスレットを左手に装着。

「……」

 と?
 風が?
 窓も開いていない部屋に風が起こっている。

 この風は……公爵令嬢から?

「サヴィアリーナ様?」

「静かに」

 風の中、変化した声音で冷静に答えるサヴィアリーナ嬢。

「……」

 彼女の絹糸のように美しい髪が風に舞っている。
 ふわりと広がった朱色の長髪が渦を巻いている。
 その次の瞬間。

「これは?」

 令嬢の髪色が変化していく。
 渦の中心、一部の朱が紺へと変わり、そして……。
 強く波打つ朱髪が紺色に転化!?
 全てが鮮烈な濃紺に変化した!!

 何が起こってるんだ?

「……」

 いまだ揺れなびく濃紺の髪の下。
 容貌も少しずつ変化して。
 朱色の眼が蒼に、輪郭も変わって……。

 風が止んだ。

「……」

 濃紺の髪に蒼眼。
 泰然とした微笑みに、この気配。

「久しいな、アリマ」

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