30年待たされた異世界転移

明之 想

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第11章 陰謀編

無反応

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「ぐああぁぁぁ!!」

 中央階段の手前、俺と剣姫の横に仁王立ちするオルセー。
 天井に向けてとんでもない咆哮を上げている。
 常人が出せるとは思えないような咆哮だ。

 そのあまりの異常さに俺と剣姫は後退りしてしまう。

「イリサヴィアさん?」

 何が起こってる?
 どうすればいい?
 と目で問いかけるも剣姫は首を振るだけ。
 様子見しろってことか?

「ああぁぁぁ!!」

 絶叫を続けるオルセーの体は強靭な筋肉で覆われ、2倍近い厚みを持った歪な体に変貌を遂げている。

 どう考えても不穏な状況としか思えないぞ。

「ぁぁぁ」

 どこまでも続きそうだった咆哮が止んだ。
 オルセーがゆっくりと頭を下げ、天井からこちらに目線を戻してくる。

「ぅぅ……」

 真っ赤に染まった両眼をぎょろりと見開いたその様は、理性を失った野獣のよう。
 さっきまでのオルセーと同じ人物とは思えないほどの変貌ぶりだ。

 と、ここで剣姫が様子見を止め前に出た。

「オルセー殿?」

 話しかける公爵令嬢姿の剣姫に対しても、オルセーの目は変わらない。
 反応が見えない。

「どうしました? 何をされたのです?」

 縄で拘束していた事実などなかったかのように、剣姫が心配そうな声で問いかけていく。

「……」

 が、オルセーからの返事はない。

「魔道具でしょうか?」

「……」

 剣姫に向けられた不気味な赤眼は焦点が定まっておらず、まるで何も見えていないようだ。

「話してくださらないと分かりません」

「……」

「オルセー殿?」

「……」

 何度声をかけても反応がない。

「私が分からないのですか?」

「……」

 どうしようもないといった仕草で剣姫が目を逸らし、こちらに目配せしてきた。
 これは、気にせず意識を奪えと?

 そうだな。
 正直理解不能の状況だが、このまま放置していいわけがないよな。

 ただ……。
 このオルセーを簡単に眠らせることができるのか?

 と考えながらも足を踏み出したところ。

「んん?」

 傍らの床からくぐもった声が響いてきた。

「んんん!?」

 バシモスだ。
 こいつも意識を取り戻したのか。

 って、まさか、続けて変身するんじゃないだろうな?

「ん! んん!!」

 猿ぐつわの下で叫ぶバシモスに変身の兆候はない。
 とりあえず、大丈夫みたいだ。
 が……。

「んん!! んんん!!」

 この声は単なる怒りじゃなく、何か話したいことがあるようにも見える。

「アリマさん?」

 とはいえ、まずはオルセーだ。
 視線で訴えてくる剣姫に頷きを返し、再度前進。

「……」

 いまだ無言で立ち尽くすオルセーに向け近距離から。

「雷撃!」



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