30年待たされた異世界転移

明之 想

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第11章 陰謀編

攻防 2


「っ!」

 さっきの俺のように上半身だけで回避しようと、力技で半身を捻る宗主。
 その動きを支えるのは凄まじい筋肉と強化された肉体。
 称賛に値する反応だが、驚くほどじゃない。
 ヴァルターさんや剣姫など、何度も達人の至芸を目撃してきた俺にとっては想定の範囲内だ。

「ぐっ!」

 上半身を逸らすなら、こっちは剣を伸ばすだけ。
 半歩踏み込んで、剣を振るうだけ。

 ザンッ!

 躍動する剣身に確かな手応え。
 バケモノオルセーのような硬さはない。
 間違いなく宗主の胸を斬り裂いた。

「ううっ!」

 よろめきながら後退する宗主。
 体からは力も抜けている。

 決まりだな。

「……」

 レンヌ家当主の剣も魔力付与も素晴らしいものがあった。
 オルセーやバシモスより数段上なのは間違いない。

 ただ、それでも。
 剣姫に比べると、どうしても見劣ってしまう。
 剣姫と戦った経験のある俺、当時よりレベルが上がり経験を積んだ俺が倒せない相手じゃない。

 さて、決着はついた。
 となると……この状況でとどめは刺さないほうがいいな。
 
「ぐっ、ううぅぅ」

 俺としては、レンヌ家との間に不要な遺恨は残したくない。
 まっ、多少の禍根が残るのはどうしようもないが。

 ということで、ギリオンを……ん?

 宗主の体が光に包まれている?
 これは?

「アリマさん、まだ終わってません!」

 光に思い当たるところがあるように剣姫が注意を促してきた。

「宝具です!」

「……」

 そうか。
 相手は魔道具の大家でもあるレンヌ家の当主なんだ、宝具くらい使ってくるか。
 なら、その効果は?

「おそらくは、護宝かと」

「ベリニュモナの護宝ですか?」

「ええ」

 宝具ベリニュモナの護宝。
 確かに、重傷を消し去るこの宝具は今の状況にぴったりだ。

「っ!」

 光がはじけた!

「……」

 光の跡にはレンヌ家宗主。
 剣撃を受けよろめいていた名残りは微塵も見えない。
 しっかりとした足取りで立っている。

「見事な一撃だ。が、残念だったな」

 いいや。
 ベリニュモナの護宝と分かったんだ。
 こっちにはもう悔しさも驚きもない。
 それに、護宝と理解した時点で既に動いている。

「なっ!?」

 宝具で全快したのは胸の傷だけ。
 心身に受けた衝撃は残っているだろうし、そもそも戦闘態勢にも入っていない。
 であれば、こっちは攻めるのみ。
 待つ必要なんてない。

「くっ!」

 案の定、棒立ちだ。
 それで対応できるかな?
 この一振りを?

 シュン!

 間合いに飛び込みざま、横薙ぎに剣を一閃!

 ザシュッ!

 完璧だ。

「うぐぅ!」

 さっきの胸の傷をなぞるような一撃。
 手応えも十分。

「うぅぅ」

 宗主は床に片手、片膝をついている。
 今度こそ決まりだろう。

 そう終わりを確信した瞬間。
 また光?
 さっきと同じ光だ!


感想 11

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