30年待たされた異世界転移

明之 想

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第11章 陰謀編

白亜宮 2

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 剣姫と2人で歩くのは、白亜の名にふさわしい見事な通路。
 こうして歩いているだけで、自然と背筋が伸びていく。
 とはいえ、圧迫感を覚えるわけじゃない。
 むしろ、居心地の良さを感じてしまう。

「サヴィアリーナ様、ごきげんよう」

「ご無沙汰しております、サヴィアリーナ様」

 壮麗でありながらも華美に過ぎず、穏やかで落ち着きのある内観。
 無駄のない洗練された気品と厳かさ。

「サヴィアリーナ様、先日は……」

「サヴィアリーナ様、あの件なのですが……」

 目に映るすべてが、俺なんかには計り知れない価値があるのだろう。

「サヴィアリーナ様、明日の謁見に……」

「サヴィアリーナ様……」

 宮城の外観同様に白を基調とする装飾が施された床や内壁。
 温かな光が差す通路、陽気に満ちた空間。
 それらが作り出す素晴らしい調和。

 安らかな心地良さが、ここには間違いなく存在している。
 ただ……。

「サヴィアリーナ様、近々……」

 すれ違う人々から、ここまで声を掛けられると。
 どうしても意識がそちらに向いてしまう。興がそがれてしまう。

 なるべく気にしないようにはしているのだが、大半が貴族らしき人物のため無礼を働くわけにもいかず……。

「サヴィアリーナ様、次のお茶会には……」

「明日の会議で……」

 プライベートの誘いも公務も関係なし。
 老若男女も問わず。
 多くの者が次から次に剣姫の前で立ち止まっては話しかけてくる。
 ほんと、どれだけ続くのか?
 見当もつかない。

「サヴィアリーナ様、そちらの方は?」

「異国の方でしょうか?」

 しまいには、俺に興味を抱く者まで出てくる始末。

「私の友人であり、本日の客人でもある」

「おお、そうでしたか!」

 もちろん剣姫に任せておけば問題はないのだが……。

「ふぅ」

 重くなる気分に、つい溜息をついてしまう。
 油断すると、忌避感が顔に出てしまいそうだ。

 そう実感した途端、さっきまでの心地良さが場違い感にすり替わっていく。

「ええ」

「そうでしたね」

「ふふ……」

 そんな俺の横で平然と悠然と宮内を泳ぎ渡る剣姫。

「……」

 まったく。
 今さらながら、彼女には驚かされるよ。

 剣姫イリサヴィアとしては誰もがその勇名を知る超一流の冒険者、公爵令嬢サヴィアリーナとしては王太子を補佐し辣腕を振るう筆頭秘書官。実力も人気も如才なさも、非の打ち所がないのだから。



「すまない、アリマ」

「いえ、私は急いでいませんので」

「そうは言っても、今この時間はアリマのための時間なのだぞ」

 一介の冒険者にこの気遣い。
 ほんと、かなわないよな。

「こうして宮城を案内していただけるだけで十分ですよ。本当に光栄なことです」

「……申し訳ない」

 だから、謝らないでくれ。

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