30年待たされた異世界転移

明之 想

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第11章 陰謀編

急行


<ギリオン視点>



「おい、ヴァルター、まだ追いつかねえのか?」

「そう急くな」

「はっ、よく言うぜ」

 オレも急いでっけどよ、おめえほどじゃねえぞ。

「……」

 とにかく、今のこいつは酷い顔してやがる。
 頭の中はウィルでいっぱい、いっぱい。余裕も何もあったもんじゃねえ。
 さすがにここまで焦ってっと、マズいだろ。
 まあ、気持ちはよく分かるけどな。

 つっても。

「大丈夫だ、そこまで心配するこたねぇ」

「……」

「王女様と近衛騎士たちがついてんだぜ、簡単にやられやしねえよ」

「……そう、だな」

 声が腑抜けてやがらぁ。

「その調子じゃ、追いつく前にへばっちまうぞ」

「……分かってる」

「なら、しっかりしろや!」

「……」

「ウィルのことも騎士たちのことも、ちっとは信用してやれ」

「……ウィル様だ」

「ああ?」

「ウィル様と呼べ」

「はっ、ウィルはウィルだろうが。おめえにはどうか知んねえけどよ、オレにとっちゃあ、ウィルは夕連亭の店員でしかねえ。何より、ウィル自身それでいいつってんだ」

「……」

「これからもウィルって呼ぶかんな」

 っとに、ウィルが関わるとすぐこれだ。
 普段の冷静さはどこいっちまったって感じだぜ。
 この弱点だけはどうしようもねえな。

「……」

 それにしても、この空気は重すぎだろ。




「あと四半刻もせぬうちに、国境に到着する」

 結局、国境まで来ちまった。

「で、会えんのか? そこで?」

「……おそらく」

 おそらくかよ。
 ほんと、とんでもねえ追跡だな。

「とにかく、備えだけはしておけ」

「とっくにしてらぁ」

 つっても、すんのは剣の準備だけ。
 あとは臨機応変ってやつで。

 って。

「おい!」

 また速度を上げやがった。

「速すぎんぞ、ヴァルター」

「あと少しだからな」

 ちっとは冷静になったかと思えば、これだ。

「少しでもこれじゃ、バテちまうぞ」

「問題ない。何とかなる」

「問題大ありだわ!」

 そもそもが、ここまで急ぐ必要があんのかって話だ。
 キュベルリアから馬で駆け続け、馬を乗り捨てた後は走り続けるってよ。
 やり過ぎとしか思えねえ。

「ギリオン、分かってるよな」

「何が?」

「急ぐことになった理由、いや原因だ」

 まだ、それを言うかよ。

「だからな、頑張れ」

「……」

 ちっ。
 反論できねえじゃねえか。




 速度を上げて走ること約四半刻。

「はあ、はあ……」

 さすがに体力がマズいことになってきた。
 これじゃあ、到着しても十分に動けねえ。

「ヴァルター、ちっと速度を……」

「見えてきたぞ!」

「ん?」

 着いたのか?

「その先だ」

 オレたちが走る間道のかなり前方。
 木々の切れ間から僅かに見えたのは……。

「おい!?」

 まったくの想定外。
 予想もしていない光景だった。







 第11章  完


感想 11

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