30年待たされた異世界転移

明之 想

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第12章 激闘編

懇願


「お待ちください!」

「……」

「……」

 かけられた声の強さと切迫感に、足が自然と止まってしまう。

「お願いします、話を聞いてください!」

 俺たちに話しかけてきたのは15歳くらいの少女だ。

「話を!」

 こちらの進行上に身体を投げ出すようにして立っている。

「……イリサヴィア様」

「うむ、話を聞こう」

「あっ、ありがとうございます!」

「時間がない。急いでもらえるかな?」




「……そういうわけで街は大変な状況になっているんです。ですから、冒険者様、どうかお助けください」

 国境に向けて急ぐ剣姫と俺の前に体を投げ出し、こちらの足を止めた少女。
 そんな彼女の話を簡単に聞いたところ。

「魔物たちを何とかしないと、この街は……」

 街から少し外れた辺りに広がる森。
 その奥から現れる魔物に街が脅かされているというのだ。

「ふむ……。悪いが我らも急いでいるのでな。ただの魔物討伐ならば、領主に任せるがよい」

「……」

「どうした? 街にも兵が常駐しているであろう?」

「見ての通り街は困窮しております。ですので、領主様の私兵も……」

 魔物討伐には、数も腕も足りないってことか。

「冒険者ギルドはどうなのだ?」

「ギルドはありません。数年前に撤退してしまったので街にはもう」

「近隣の街のギルドは?」

「依頼はしたのですが受けてくださる方がいなくて。何度も隣街に足を運んだのに」

 本当にどうにもならない状況なんだな。

「だから……」

「……」

「……」

 確かに、この街の様子を見れば納得できる話ではある。

「冒険者様、お願いします!」

 地面に着こうかという勢いで頭を下げる少女。
 彼女の後ろに集まってきた人々も。

「「「「「お願いします!!」」」」」

 必死に頭を下げている。

「ふむ……」

 微かに困惑の表情を浮かべ、目を閉じる剣姫。
 さて、困ったことになったぞ。

「……」

 もちろん、単に討伐で済むのなら俺と剣姫で片付けられる可能性は高い。
 ただ、それだけで終わるのか?
 事後の処理は手伝えないんだぞ。

 何より、こちらは急ぎの道中だ。余裕があるわけでもない。
 宿で休息をとる時間も惜しんで先へ進もうとしているくらいなのだから。

 とはいえ……。

 彼らの様子を見ていると、このまま立ち去るのも忍びないと感じてしまう。

「……」

 剣姫も同じ思いのようだ。

「「「「「お願いします!!」」」」」

 はあぁ。
 これはもう仕方ない、か。

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