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第12章 激闘編
切り札
<エリシティア視点>
「これは……」
飛び跳ねるように後退した蒼鱗の魔物。
前衛との間に10歩ほどの距離ができてしまった。
「「「効いてる?」」」
「「「そうだ!」」」
「「「効いてるぞ!」」」
放ち続けた剣と魔法の効果がようやく?
そう考えていいのか?
いや、しかし、傷ついているようには見えない。
ならば……??
と!
「グルゥオオォォォ!!」
ここでまた叫声だ!
「「「「「ぐっ!!」」」」」
「「「「「うぐっ!」」」」」
これまでとは違う鋭い咆哮が耳奥を抉ってくる。
防御陣から距離を取っていた私でさえ耳が痛い、頭が痛い。
そんなものを近距離で受けた前衛は。
「「「「「っ……」」」」」
「「「「「ぅぅ……」」」」」
耳を押さえ蹲ってしまった。
「グルゥ」
咆哮を終えた魔物は、すぐにでも動き出しそうな勢い。
一方、騎士たちはまだ立ち直れていない。
「エリシティア様!」
「……」
「ここは危険です、後退してください!」
私を庇うように立っていたウォーライルが撤退をすすめてくる。
騎士たちを放置して退くようにと。
「今すぐに!」
この判断は妥当なものだろう。
だがな。
「少し待て」
リリニュスを忘れてないか。
敵の咆哮にも屈せず続けていた高位魔法の詠唱が今にも終わろうとしているんだぞ。
「時間がありません!」
焦りを募らせるウォーライルの声に重なるように。
ドン、ドスン!
地面を蹴る大音が響いてきた。
蒼鱗の魔物がまた向かってくる。
「エリシティア様!!」
「待て、リリニュスの魔法だ」
「……」
ドスン!
ドスン!
「天と地の深淵よ、我が願いをかなえ……」
高位魔法がもう放たれる。
「充分間に合う」
が、この間合いはよろしくない。
複数の騎士が巻き込まれる可能性も。
「皆、左右に散れ! リリニュスの魔法を避けるんだ!」
私の声を受け左右に離脱する前後衛。
壁が割れたような視界の先、平原の上には蒼鱗の魔物の姿。
そこに。
「……………清浄なる業火が全てを焼き尽くさん! ファイヤーストーム!!」
リリニュスの高位魔法が炸裂した。
*************************
「ふむ」
街道を北に外れ、剣姫とともに足を踏み入れた件の森。
街人の話にあった魔物が棲息する地であり、俺たちの経路上にもなる森なのだが。
「厄介だな」
「……ええ」
想像以上の悪路と木々の密集に、走る速度が上がらない。
先を急ぐ道行き、その上、依頼を受けた魔物討伐までこなさなければならない状況でこれは……。
どう考えても好ましくない。
なら。
「魔物の対応は私がしますので、イリサヴィア様は先を急いでください」
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