30年待たされた異世界転移

明之 想

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第12章 激闘編

痕跡


「イリサヴィア様、出口ですよ」

 ジンクと別れてすぐのこと。
 ここまで来れば当然のことながら、平原へと抜ける森の端が視界の先に見えてきた。

「うむ」

 今回の横断は当初の予定以上に時間がかかってしまった。魔物戦に加えジンクとの思わぬ遭遇があったのだから仕方ないこととはいえ、先を急ぐ剣姫にとっては望ましいことじゃないだろう。

 それでも、今の剣姫の表情に曇りは見えない。
 ということは、大過ない程度の遅れだと。
 そう考えていいのかもしれないな。

 ひとまず、道行きについては良しとして。
 問題は……。

「アリマ、依頼が気になるのか?」

「ええ、まあ」

 依頼された魔物討伐。
 あまりにも手応えがなかった。
 これなら俺たちが討伐せずとも何とかなったのでは、と思えるほどに。

「感知では特に異常はなかったのであろう」

 剣姫の言う通り。
 森の広範囲に渡って調べた結果、今回の討伐で十分という結論に既に達している。それでも、どうしても疑心が……。

「ならば気にすることはない。契約の履行にも問題はないのだからな」

「……そうですね」

 この依頼、討伐数については俺たちのできる範囲でという特殊な契約になっている。つまり、現状の遂行で問題なしってことだ。

「街人の話とも一致している。何より、今から戻っても森全域を調べる時間的余裕はないぞ」

 これも、その通り。

「どうしても気になるのなら、こちらの仕事を終えた後にまた森を探ればいい」

「……」

「それとも、アリマだけ森に残るか?」

「……いえ」

 こっちは妙な疑念が残るだけ。
 大筋に支障はない。
 であるなら、優先すべきは決まっている。

「今は森を出ましょう」

「よいのか?」

「はい」

 まずは、剣姫の仕事に付き合って。
 森の探索が必要なら、彼女の提案通り事後に着手すればいい。

「なら、行こう」

 若干後ろ髪を引かれながらも出口に向かって歩を進め。
 立ち止まることなく森を出た俺の目の前には……。

 見渡す限り、平原が広がるばかり。
 付近には人の気配も魔物の気配も感じられない。
 微塵も折れることなく真っ直ぐに生え揃った平原の植物からは、集団が歩いたような跡も確認できない。

「……」

 気配については、森を出る前から感知で分かっていたことではある。
 ただ、エリシティア様やギリオンについての何らかの痕跡は残っていると思っていたのだが。

「ふむ……」

 俺の傍らで、探るように平原を見つめる剣姫。
 彼女も同じ思いのようだ。

「……」

「……」

 平原の状況から推測するに。
 彼らはここを通らず他の道を進んでいると?
 あるいは、痕跡が残らぬくらい以前にここを通ったと?

 いずれにせよ、この付近にはいないということだろう。

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