30年待たされた異世界転移

明之 想

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第12章 激闘編

武具

「こちらです」

 案内役の声を受け、本陣を前に歩を止めた剣姫と俺。

「少々お待ちください」

 一言告げた先兵が、返事も聞かず陣の中に入っていく。
 この中に派遣軍の指揮官がいるのだろう。
 ところで。

「イリサヴィア様、どのように話されるのです?」

 待っている間、本陣から数歩離れ傍らの剣姫に小声で囁くと。

「すべては状況次第だが……ここにエリシティア様がおられるとは思えぬからな」

「ええ」

 依然、ギリオンの存在は感じられない。
 エリシティア様がいる空気感も皆無。
 このような場で気配遮断の魔道具を使うとも思えない。
 となれば……。

「そうは言っても、ここまで来たのだ。レザンジュの出方を見ながら考えるとしよう」

「しばらくは様子見ですね」

「うむ。暴れるなよ、アリマ」

「そんなことしませんよ」

 大軍に囲まれても、剣姫はいつも通り冷静なまま。冗談を口にする余裕もある。
 これなら問題ない。
 レザンジュとの折衝は彼女に任せておけばいい。



「お待たせしました。どうぞ、お入りください」

 戻って来た案内役に促され、本陣の中に入ると。

「……」

 正面の床几には指揮官らしき男性の姿。その左右には部隊長らしき者が数人並んでいる。

 彼らの目に浮かぶ色は、どう見ても好ましいものじゃない。嫌悪感を露わにしている者もいるくらいだ。

 まあ、当然か。
 と軽く頭を振った俺の視界に気になるものが入ってきた。

 剣、防具、外套?
 ところどころ血と泥で汚れた武具が指揮官の傍らに並んでいる。
 それも少数ではなく、かなりの数だ。

 ん?

 複数の中に2つ。
 見覚えがある、そう感じてしまう武具が。

「イリサヴィア様?」

「うむ」

 囁くこちらに剣姫が迷いなく頷きを返し、武具に近づいていく。もちろん俺も。

「どうやら、当たりのようだな」

「……ええ」

 ここまで近づけばもう、見間違いようがない。
 ギリオンの防具。
 ヴァルターの剣。
 2人の愛用武具がここに確かに存在している。
 彼らの身に何かがあったんだ!

「少し尋ねたいのだが、この外套……」

 剣姫が口にしたのは、ひと際目立つ深紅の外套。
 ギリオンとヴァルターのものじゃない。

「エリシティア様の外套では?」

 エリシティア様の?
 王女の外套まであるのか?

 確認のため手を伸ばす剣姫を遮ったのはレザンジュの騎士。

「離れてください」

 剣姫と俺の前に立ち塞がっている。

「触れることは許可できません」

「……なぜだ?」

「っ!」

 射すくめるような剣姫の視線に怯んだ騎士が一歩後退する。

「ふっ、礼儀を知らぬようだな」

 そこに響いてきたのは指揮官の声。
 再び伸ばした剣姫の手が止まってしまう。

「名乗りもせずいきなり手を伸ばすとは、やはり冒険者は冒険者か」

「……」

「腕はあっても常識はない」

 指揮官の言葉を受け陣内に愚弄と嘲笑が溢れ出す。

「……我が名はイリサヴィア」

 そんな状況下でも剣姫は変わらない。

「白都キュベルリアの冒険者だ」

 平然とした態度で指揮官の方に体を向け。
 抑えていた気を解放、周囲を圧するように放っていく。

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