30年待たされた異世界転移

明之 想

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第12章 激闘編

帰還


 異界の有無、エリシティア様たちの不在。

 当然、それは俺も危惧している。
 考えたくないことだが。

「ないとも言い切れません」

「その場合、エリシティア様に繋がる手掛かりが消えてしまうな」

「……」

「そうは言っても、今はここで待つしかない、か?」

「……ええ」

 半刻か1刻か、とにかく待機する以外手はない。

「ちょっと待て!」

 叫び寄ってきたのは……また赤髪か。

「エリシティア様への手掛かりが消えるとはどういうこった?」

「異界の話ですよ」

「異界だと?」

「さっき少し話したでしょ」

「……」

「まさか、聞いてなかったのですか?」

「うっ、それは……」

「君、アリマ君」

 口ごもる赤髪の後ろから声をかけてきたのは白金髪のシャリエルン。
 喪心状態は完全に脱しているようだ。

「色々と解せぬことばかりだが、今はまあよい。それより、さっきの異界の話は本当なのか?」

「分かりません。現界と異なる世界は知覚できませんので」

「では……やはり待つしかないと」

「ええ」

「そうか……なら、幾つか教えてほしい。まずは」

 疑問がシャリエルンの口の端にかかった、まさにその瞬間。

「団長、あそこ!」

 シャリエルンの後方空間が歪み始めている。
 これはエビルズマリス登場の歪曲じゃない。
 つまり。

「どうやら、存在したようだな」

「みたいですね」

 このタイミングで、この歪み。
 まず間違いなく異界崩壊の兆候だろう。

「あとは皆が囚われていることを願うばかりか」

「はい」

 消えたエリシティア様たち。
 残された衣装、防具。
 再臨したエビルズマリス。
 これらの状況から考えて、異界に囚われている可能性が低いとは思えない。
 だが、今は祈るだけ。

 エリシティア様、ギリオン、戻って来てくれ!

「団長、裂けます!」

「お、大きい!」

 8人が凝視する中、歪曲空間が縦に大きく割れ。
 その開いた裂け目から……騎士だ!
 騎士姿の者たちが現れた!

「エリシティア様の?」

「護衛騎士隊が戻って来た?」

 見知った者が複数いる。
 間違いない。
 エリシティア様の護衛騎士たちだ。

 が……。

「っ! エリシティア様は?」

「どこにいる? 無事なのか?」

 エリシティア様、ギリオン、ヴァルターの姿が見えない。


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