30年待たされた異世界転移

明之 想

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第12章 激闘編

合理的

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 薔薇の団長がこんな顔で沈黙しているのだから、相当なことなんだろう。
 とはいえ、このままでは時間が無駄に過ぎるだけ。
 なら、とりあえず。

「シャリエルンさん、何かあるのでしたら話してください」

「あ、ああ」

「遠慮なく、どうぞ」

「その……非常に口にしづらいのだが……」

「はい」

「分からないのだ」

 何が?

「エビルズピークは広い」

「そうですね」

「広大な山のどこにエリシティア様が転移されたのか? 我らには特定できないのだ」

 なるほど。

「もちろん、エリシティア様に近づければ気配も感知できると思うが、その近づくまでが容易ではない」

 それはまあ、そうだよな。

「そもそも、かの山にエリシティア様が転移されたという事実は確定しておらぬ。仮に他の地に転移されていた場合、我らはいたずらに時間を浪費することになるだろう」

 確かに、転移地点は推測にすぎない。
 不思議と確信を持てる推測だが、根拠があるわけでもない。
 だから、もしこの考えが外れていたら……。
 転移予測地を知らぬ憂鬱な薔薇は山中でただ途方に暮れるだけになる。
 当然、それは俺の責任だ。

「目的地を知る君たち2人に先行されると、我らは運を天に任すことになってしまう」

「……」

「ゆえに……出発を後らせてくれないか。我らに同行してもらえないか?」

「シャリエルンさん、事情は充分理解しました」

「では?」

「はい。ワディナート転移で大幅に時間を短縮できたのは憂鬱な薔薇の皆さんのおかげです。その厚意を忘れて、我らだけ先行するわけにはいきません」

「そうか!」

「ですが、先行の利は捨てがたいとも思っています」

 半刻の待機も薔薇の疾走速度に合わせるのも合理的じゃない。

「……というと?」

「今は私1人が先行し、皆さんは後程、転移推測地点を知るイリサヴィア様と共にこの拠点を出る。というのはいかがでしょう?」

 剣姫は魔力を多少回復できる。
 薔薇は迷わず目的地に向かうことができる。
 俺は時間を有効に使える。
 皆に損のない理にかなった提案だろ。

「アリマ、1人で行くつもりか?」

 とはいえ、まあ、剣姫は反対するよな。

「1人で戦うつもりか?」

「エビルズマリスと対峙する危険はありますが、その可能性は限りなく低いはずです」

「……」

「他の魔物なら、私1人でも何とか」

「……」

「ですので、イリサヴィア様、憂鬱な薔薇の皆さんとの同行を頼めないでしょうか?」

 まだ頷いてくれない。

「現状はこれが最適解かと?」

「……」

「イリサヴィア様?」

「……分かった。今回は乗ってやる」

「ありがとうございます」

 よし、これで憂いなく出発できるぞ。

「では、シャリエルンさん、そういうことで」

「いや、待ってくれ」

 これでも異論があるのか?

「私もともに先行しよう」


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