30年待たされた異世界転移

明之 想

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第12章 激闘編

不安


「ギリオン、そろそろとどめを刺してやれ」

「分かってらぁ」

 ヴァルターに応えるギリオンの声に疲労は感じられない。
 覇気に満ちている。

「終わりにしてやんよ」

 これまでの戦いぶりに加え衰え知らずのこの活力。
 心から頼もしいと感じてしまう。
 が、それと同時に不安も……。

「おりゃあ!」

「グギャ!」

 ギリオンの剣の進化が単に腕によるものなら問題はないだろう。
 もちろん、その可能性もある。
 ただ、あの腕が……。

「だぁぁ!」

「ギャアァァ!」

 普段とは違う、異常に盛り上がった筋肉。
 さらに、剣を振るう度に見える腕下の鱗。
 どう考えても普通じゃない。

 ならば、これこそが今のギリオンの力の源なのでは?
 あの剣撃を可能ならしめているのでは?

「……」

 すべて推測にすぎないものの、不安は消えてくれない。
 希望以上の懸念が胸を締め付けてくる。

「うりゃああぁ!」

 私が不吉な思いにとらわれている中。
 ギリオンの攻勢は勢いを増し続け。

「とどめだぁ!!」

 ついに、勝負を決するような一撃が。

「グギャ、ギャアァァァ!!」

 上段から叩き込まれた剛剣を身に受け、大きく痙攣する小ドラゴン。
 宙を掴むように手を伸ばし、そしてそのまま。

 ドッスーーン!

 地に落ちた。

「おっしゃあ!」

 勝利の雄叫びを上げるギリオン。
 その腕で蒼鱗が鈍い光を放っている。

「見事です、ギリオン殿!」

「あったりめえよ。んなことより、ウォーライルの方はまだなのか?」

「……」

「しゃあねえ、手伝ってやらぁ」

 ギリオンが左方の線戦に駆けていく。

「これで何とかなりそうですね」

 その様子を確認したリリニュスが安堵の表情で語りかけてきた。

「……うむ」

「何か憂慮すべき点がございますか?」

「……」

 今はもうこの戦いに対する危惧はない。
 残る2頭も程なく葬り去れるはず。
 それでも、鱗化に対する懸念だけは……。

「エリシティア様?」

「……ああ、問題はない。攻撃魔法も援護程度で充分だ」

「ええ、このまま剣で仕留めてくれそうです」

 こうして話している間も、騎士たちの剣勢は増すばかり。

「ギャアァァ!」

「グギャアァ!」

 小ドラゴン2体の傷も深く広くなり続けている。

「あと数撃でしょうか?」

 リリニュスの見立て通り。
 決着はすぐそこだろう。
 そう誰もが思っていたところに。

「えっ!?」

「歪んでる?」


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