30年待たされた異世界転移

明之 想

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第12章 激闘編

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「また、あの歪みが!?」

 前衛騎士たちの後方、我らとの間の中間地点だ。
 しかも、最前より大きい。

 ということは……。

「ヴァルター殿、ギリオン殿!」

 こちらの声に振り向いたウォーライルが異状を目にし、驚きの表情を浮かべている。

「空間が歪んでいます!」

「ああ?」

「次がやって来るかもしれません」

「ほんとかよ?」

「おそらくは」

「ちっ!」

「ギリオン殿?」

「いいぜ、何頭でも相手してやらぁ。だよな、ヴァルター」

「……うむ」

「ってことで、こいつらはさっさと倒しちまうぞ」




***********************




 整然と区画された街並みを左右に見ながら駆ける。ひたすら駆け続ける。
 隣には白金の髪をなびかせながら疾走するシャリエルン。黒都で最高の冒険者パーティーと評される憂鬱な薔薇の団長であり、魔法剣士でもある一流の冒険者だ。

「思っていたより走りやすいな」

「レザンジュ兵が少ないですからね」

 ワディナートを占領したレザンジュ王軍。
 以前訪れた際は通りに溢れていたその軍兵が、剣姫の偵察報告通り今はほとんど見られない。

「ふむ、大半が黒都に戻ったのか」

「だと思います」

 おかげで隠れることなく疾走できる。
 先を急ぐ身としては本当にありがたい状況だ。

「しかし、君の強化脚は素晴らしいな」

「シャリエルンさんこそ、余裕じゃないですか」

 憂鬱な薔薇の拠点を出てから八半刻(15分)。
 共に魔力で強化した脚で駆けているのだが、表情に疲れなど全く現れていない。

 正直、彼女がここまで走れるとは思っていなかった。
 その戦闘能力といい魔力の運用といい、彼女だけは憂鬱な薔薇の中でも別格なのかもしれないな。

 しかし、この速度なら6刻もかからずエビルズピークに着けるはず。
 嬉しい誤算だよ。

「余裕でもないぞ。長距離を走るのに、これ以上の速度は厳しいからな」

「距離が短ければ、もっと加速できるってことですよね?」

「それは、君も同じだろ」

「まあ……」

 確かに、短距離でいいなら倍以上の速度でも走行は可能だ。
 とはいえ、そのペースで息が持つのは僅かなもの。6刻という時間を駆け続けるには、この程度が最適だろう。

「馬を選ばなかったのは正解だな」

「ええ」

 通常、馬が1日で走破できる距離は並歩で約50キロ。駆歩で30キロ程度。今の俺たちが劣ることはない。

「ところで、そろそろ大門だが」

「問題は門兵ですね?」
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