30年待たされた異世界転移

明之 想

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第12章 激闘編

脱出


「ああ、我らはエルンベルンの移宝を使ってワディナートに入ったからな」

 正規のルートで入街していないため、説明やら手続きやらが面倒になるのは当然。
 その上、俺は王軍と何度も戦っている身だ。ここで面が割れる可能性も否定できない。

「黒都一の冒険者パーティーでも難しいですか?」

「平時ならまだしも、この時局ではな」

「やはり、アイスタージウスの手兵が?」

「当然そう考えた方がいい」

「では、どうします?」

「外壁を越えよう」

「……」

「まさか、できぬとは言わぬだろ?」

「それは、まあ」

 魔法を使えば、難しいことでもない。
 が……。

「なら、こっちだ」

 俺の懸念を無視するようにシャリエルンが大門へと続く大通りを外れ、遠回りしながら外壁に近づいていく。すると。

「ここだ」

 大門周辺より2メートルほど低い外壁が目に飛び込んで来た。

「ここを越えるぞ」

「……」

「助けが必要か?」

「……いえ」

 その必要はない。
 懸念があるだけだ。
 とはいえ、今はもう先を急ぐしかない、か。

「必要ありません。シャリエルンさんは?」

「こちらも問題ない」

「でしたら、見つからぬうちに」

「ああ……ストーンウォール、ストーンウォール、ストーンウォール!」

 高さの違うストーンウォールを複数形成していくシャリエルン。
 石壁で階段を作るつもりか。

 なら、こっちは。

「サンド!」

 大量の砂を足下に創出。

「サンド!」

 砂で地面自体を高めていく。

「サンド!」

 時間にして数秒。あっという間に壁の高さまで到達した。
 とほぼ同時にシャリエルンの階段も完成。

「さすがだな」

「いえ、シャリエルンさんこそ」

「ふふ、君は褒めてばかりだな」

 確かに、さっきから同じようなことばかり言っている気がする。
 とはいえ、彼女の腕が素晴らしいのは事実なのだから仕方ない。

「ん? 誰か来るな」

「門兵でしょうね」

 大門方向から近づく数人の気配。
 門兵で間違いないはず。
 ただ、その中には侮れない者も。

「……」

 若干気にはなるが。

「時間を使いたくありませんので、ここは戦わず先を急ぎましょう」

「ああ、それがいい」

 2人ともに壁から飛び降り、強化脚で無事に着地。そのままワディナートの外壁をあとにする。

 ここからエビルズピークまで距離はそれなりにあるものの、行く手を遮る難所は存在しない。駆け続ければ問題なく到着できるだろう。

「……」

「……」

 夕暮れが迫る街道を駆ける。
 シャリエルンと共に無言で足を動かし続ける。


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