30年待たされた異世界転移

明之 想

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第12章 激闘編

獄炎

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 この場に待機していた俺とシャリエルンには充分な時間があった。
 当然、準備は万端整っている。 
 つまり、魔法壁の即時展開も。

「氷壁!」

「ストーンウォール!」

 ともに発声、瞬時に魔法壁を構築してやる。

 ドオォォン!
 ドゴォォン!

 ほぼ同時に炎塊が壁に衝突。

 ゴオォォォ!!

 壁表面を豪炎が覆い尽くしていく。
 それでも、何とか間に合ったようだ。

「アリマ!」

「ええ」

 ただし、油断できる状況じゃない。
 単純な火魔法に破られるような石壁ではないのに、既にきしみ始めている。
 シャリエルンの氷壁も同じ、溶け始めている。

 ゴゴオオォォォ!!

 炎に衰えはなく、勢いを増すばかり。
 これは、経験したことのない獄炎だぞ。

「次を出しますよ」

「うむ……氷壁!」

 シャリエルンが2枚目を発動。
 遅れて俺も。

「ストーンウォール!」

 これで2重防壁の完成だ。
 と思ったその直後。

 バリィィィン!

 ガシャーーン!

 1枚目の氷壁と石壁が崩れ去ってしまった。




*************************

<エリシティア視点>



「ギリオン、今の状態はどうだ? 大丈夫か?」

「……平気だ」

 やはり、まだ痛むんだな。
 それでも、ギリオンは泣き言ひとつ漏らさない。
 今も皆を先導するように歩いている。

「心配ねえから、気にせず進んでくれ」

「「「「「……」」」」」

 異界以降ずっと奮闘してくれているギリオンの鱗化を完治できない未熟さに、私もリリニュスも衛生兵たちも責任を感じ口を閉ざしてしまう。リリニュスの言うようにエヴドキヤーナなら、鱗化の完全治療も可能だったかもしれないと、詮無きことを考えてしまう。

 ただ、こんな状況でも空気が重くならないのは。

「ほんと何度も言ってっけどな、今回はちっと長引いてるだけだぞ。だからよぉ、こんなことで悩むのは馬鹿らしいだけだぜ」

「「「「「……」」」」」

「まっ、麓に着いたら治ってんだろ」

「……そう、か」

「おうよ! だから、姫さんも皆も元気出せや! 何なら歌でも歌うか?」

 どこまでも前向きなギリオンのおかげ。
 異界でもこの山でも、戦闘でも行軍でも。
 本当に助けられてばかりだな。


「ところで、そろそろ日が暮れそうだが」

 その言葉に垂れていた首を上げると……。
 確かに、日没が迫っている。

「どうする、姫さん? 野営の準備でもすっか? まあ、オレは夜通しでも歩けるけどよ?」

「その体では、さすがに無理だろ?」

「いんや、歩いてる内に回復すっから問題ねえ」

 あり得ない。
 理性はそう判断するのに、今のギリオンを見ているとひょっとしてと感じてしまう。我ながら、おかしなことだな。

 とはいえ。

「開けた場所があれば野営の準備に入るとしよう」



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