30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
1,382 / 1,566
第12章 激闘編

冗談

しおりを挟む

「っ!」

 ガキィン!
 キィーン!

「ウォール」

 キン!
 ガキン!
 キィーン!

 素晴らしい剣撃の連続なのに、少女には届かない。
 遠すぎる。

 ガッ!

 連撃に息が切れたのだろう、シャリエルンの剣が勢いを失い。
 動きを止めてしまった。

「……信じられぬ」

 吐息を漏らすような呟きが俺の耳を揺らす。
 その失望の思いが胸に突き刺さってくる。

「……」

 が、こっちもシャリエルンの情動を受けるだけじゃない。
 無為に攻防を眺めていただけじゃない。
 気配感知と鑑定で少女の魔力の流れを精査し、壁の弱点を探していたんだ。

「よし」

 その分析が今、まさに終了したところ。
 なので、剣を右手に歩を進めてやる。

「……」

 近づく俺に気づきながら警戒もしない少女。
 そんな彼女自慢の魔法壁目掛け最良の間合いから。

 シュンッ!

 魔力を練り込んだ剣を一閃。

 ザンッ!

 手応えは申し分なし。
 ということは、つまり。

 バリィィィィン!

「アリマ!?」

 狙い通り。
 破壊成功だ。




***********************

<ギリオン視点>



「今夜はゆっくり休んでくれ」

 1人遅れて食事を終えたオレに姫さんがそう声をかけてきた。

「ギリオン殿、お休みください」

 衛生兵たちもだ。
 ありがたいことだよな。
 つっても。

「さっきまで寝てたんだぜ、さすがに眠れねえわ」

「ふむ……では、今は横になるだけでよい。横になっていれば幾分かは身体も休まるからな」

「まだそんな気分じゃねえよ」

「気分は関係ない」

「そうですよ、まだ完全には癒えてないのですから」

「……」

「ギリオン」

 しょうがねえ。

「わあったよ、横になりゃいいんだろ」

「分かればいい」

 草刈り後の地面に作られた簡易の寝所に横たわると、確かに楽ではある。

「……」

 認めたくねえが、万全には程遠いようだな。
 それでも眠れる気はしねえ。
 なら、ちっとばかしふざけたことを。

「姫さんの言う通りしたんだからよぉ、面白い話でもしてくんねえか」

「ふむ……そうだな」

 って、おい、真に受けんのかよ。

「面白い話……」

 いや、いや。

「やめてくれ、ただの冗談だぞ」

「ん? そうなのか?」

「ああ。そんなことさせるわけねえって」

「……」

「それより、姫さんももう休んでくれ」

「問題ない。私は充分に休養を取っている」

「そんでも明日のため、なっ?」

「……」

 何だこれ?
 立場が逆転してねえか?

「では、1つ話してから休むとしよう」

 まさか姫さん、面白い話を?

「これは10年ほど前の話なのだが」

 気を使ったのか、衛生兵たちが無言で離れて行く。

「1人の聖職者が宮にやって来たのだ。そして……」



しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす
ファンタジー
 病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。  時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。  べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。  月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ? カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。 書き溜めは100話越えてます…

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

テーラーボーイ 神様からもらった裁縫ギフト

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はアレク 両親は村を守る為に死んでしまった 一人になった僕は幼馴染のシーナの家に引き取られて今に至る シーナの両親はとてもいい人で強かったんだ。僕の両親と一緒に村を守ってくれたらしい すくすくと育った僕とシーナは成人、15歳になり、神様からギフトをもらうこととなった。 神様、フェイブルファイア様は僕の両親のした事に感謝していて、僕にだけ特別なギフトを用意してくれたんだってさ。  そのギフトが裁縫ギフト、色々な職業の良い所を服や装飾品につけられるんだってさ。何だか楽しそう。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

処理中です...