30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
1,395 / 1,565
第12章 激闘編

戯言

しおりを挟む
 箱型に構築した石壁の中。
 荒れ狂う白炎の嵐に耐えるため、新たな壁発動を試みるも。

 ガッシャーーーン!!

 壁が補強される前に上部が砕け散ってしまった!

 ガラ、ガラ、ガン、ガコン!

 猛火に焼かれた石壁の破片が頭や背に降りかかってくる。
 もちろん、それだけじゃない。
 白炎もだ!

 上壁は駄目。
 逃げ場もない。
 頼りになるのは魔力。
 身体強化で身にまとった魔力だけ。

「ぐっ!」

 迫る白炎の熱が魔力越しに伝わってくる。
 焼けるように熱い!

 ゴゴオオォォォ!!

 これは無理だ。
 到底耐えられるとは思えない。
 なら、壁を消して逃げるしか!

「キャンセル!」

 消失までは2、3秒。
 獄火はすぐそこ。

 ゴゴゴオオォォォ!!

 間に合わない!
 包まれる!

「!?」

 包まれていない?
 白炎が止まってる?
 身を屈めたその上で?

「……」

 どういうことか、まったく理解できない。
 けれど、おかげでキャンセルが済んだ。
 外に脱出できる。
 と、その瞬間。

「っ!」

 外から白炎が流れ込んできた!
 さらに、止まっていた上からも!

 今度こそ避けられない!!

「ぐああぁぁ!!」




***********************

<エリシティア視点>



「斥候でないなら、レザンジュの騎士がなぜここにいる?」

「……」

 我々が異界から出た場所がここだった。
 などという話が通じるとは思えない。

「偵察以外の目的で山に上る必要などないはずだが?」

「……」

 真実が伝わらないなら、近い話をするしかないだろう。
 こちらを振り返ったウォーライルに目でそう答えてやると。

「……迷い込んだだけだ」

「迷い込む?」

 ウォーライルの返答に言葉を失う壮年男性。
 後ろの者たちは。

「「「戯言を言うな!」」」

「「「馬鹿にしてるのか?」」」

「「「ふざけんなよ!!」」」

 呆れかえっている。
 いや、それを越えているな。

「その言葉を信じろと?」

「嘘はついていない」

「馬鹿らしい。このような山中にどうすれば迷い込めるというのだ?」

「……嘘ではない」

「話にならんな」

「「「隊長の言う通り!」」」

「「「ああ!」」」

「「「信じられるか!」」」

 騒然とする相手陣営。
 こうなれば何を言っても無駄だろう。
 当然、異界云々を口に出せるわけもない。
 とはいえ……。

「隊長、あんな言い訳をする相手にすることは1つですよ」

「「「そうです!」」」

「「「やりましょう!」」」

 また空気が変わった。
 敵意から害意のようなものに。


しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し
ファンタジー
 ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。  しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達より強いジョブを手に入れて無双する!

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚。 ネット小説やファンタジー小説が好きな少年、洲河 慱(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りに雑談をしていると突然魔法陣が現れて光に包まれて… 幼馴染達と一緒に救世主召喚でテルシア王国に召喚され、幼馴染達は【勇者】【賢者】【剣聖】【聖女】という素晴らしいジョブを手に入れたけど、僕はそれ以上のジョブと多彩なスキルを手に入れた。 王宮からは、過去の勇者パーティと同じジョブを持つ幼馴染達が世界を救うのが掟と言われた。 なら僕は、夢にまで見たこの異世界で好きに生きる事を選び、幼馴染達とは別に行動する事に決めた。 自分のジョブとスキルを駆使して無双する、魔物と魔法が存在する異世界ファンタジー。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つ物なのかな?」で、慱が本来の力を手に入れた場合のもう1つのパラレルストーリー。 11月14日にHOT男性向け1位になりました。 応援、ありがとうございます!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

テーラーボーイ 神様からもらった裁縫ギフト

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はアレク 両親は村を守る為に死んでしまった 一人になった僕は幼馴染のシーナの家に引き取られて今に至る シーナの両親はとてもいい人で強かったんだ。僕の両親と一緒に村を守ってくれたらしい すくすくと育った僕とシーナは成人、15歳になり、神様からギフトをもらうこととなった。 神様、フェイブルファイア様は僕の両親のした事に感謝していて、僕にだけ特別なギフトを用意してくれたんだってさ。  そのギフトが裁縫ギフト、色々な職業の良い所を服や装飾品につけられるんだってさ。何だか楽しそう。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

処理中です...