30年待たされた異世界転移

明之 想

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第12章 激闘編

無理

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<エリシティア視点>



 問題なく戦えるというギリオン。
 今すぐ前線に跳び出しそうな勢いだ。

「姫さん!」

 その様子を見ていると信じたくはなる。
 ただ、これまでの経緯を考えると……。

「ヴァルター、どう思う?」

 ギリオンに尋ねても返ってくる答えは同じだろう。
 なら、ヴァルターに聞く方がいい。

「完調ではないですが、回復傾向にあることは間違いありません」

 それは私にも分かる。
 ただ、現時点では良好な状態であっても激しく動けばどうなる?

「昨日より状態も良さそうですし、ある程度は」

「……問題なく戦えると?」

「短時間で通常の戦いでしたら」

 そう、か。

「だから、やれるつってんだろ」

「……」

 この交戦が短時間で終わるとは限らない。
 またギリオンが常識的な戦い方をするとも思えない。
 やはり、安全策をとるなら戦闘は避けるべき。

 とはいえ、今の話を聞いていたギリオンが止まるのか?
 膠着した戦局を見ていられるのか?
 無理だろうな。

「オレは前に出るぞ!」

「止めても無駄、か」

「ああ」

「……分かった。だが、過負荷は避けるんだぞ」

「おう、任せてくれ」

 調子のよい返事をしてくれる。

「じゃあ姫さん、行ってくらぁ」

「うむ」

「ついて来いよ、ヴァルター!」

 ヴァルターの返事を待たずに、駆け出すギリオン。
 あっという間に魔法壁の後ろ、リリニュスとウォーライルの傍に到着してしまった。

「待たせたな」

「ギリオン!」

「ギリオン殿……平気なのですね?」

「平気どころじゃねえ、完璧快調万全だぜ」

「万全、ですか」

「おうよ」

「……」

「んで、リリニュス、壁はどんくらいもつ?」

「2斉射程度なら平気だ。破られても、再構築すればいい」

「上からの爆散は?」

「壁を高くすれば防げる」

「なら、しばらくは問題ねえな。つっても、まあ、勝機を見出すにゃあ」

「出るのか?」

「それしかねえのは、リリニュスも分かってんだろ」

「敵陣に着く前に矢を受けることになるぞ?」

「一撃程度なら盾と剣で何とでもなる。オレとヴァルターならよ」

「ヴァルター殿も?」

「もちろん、だよなあ?」

「うむ」

「まっ、一度敵陣に入りゃ、こっちのもんだぜ」

「……」

「よーし、次の斉射を防いだら突撃すっぞ」

「了解だ」

「次ですか?」

「おう、何射も待つ意味はねえからな」

「ならば、我らも出ましょう」

「いんや、ウォーライルと騎士は待機してくれ。爆散する中駆けんのは2人の方がやりやすいからよ」

「……」

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